一覧 Tesla入門 TSLA / NASDAQ
オルカンの中身 / 成長レンズで読む

「ただの自動車会社」では、
もう測れない。
Teslaとは何者か。

テスラ(ティッカー TSLA)は、世界のEV(電気自動車)を切り拓いた米メーカー。あなたのオルカン(全世界株式)でも上位常連(約1.2%)の中身です。ところがいま、株価は足元の利益ではまったく説明できない水準。2025年は初の減収(−3%)で営業利益率も大きく低下したのに、予想PERは約180倍。市場が見ているのはEVではなく、ロボタクシー・AI・人型ロボット(Optimus)の将来です。期待先行のこの株を、順番にほどきます。

EV(Model 3 / Y)
FSD(自動運転ソフト)
Cybertruck
エネルギー貯蔵(Megapack)
Powerwall・太陽光
スーパーチャージャー(充電網)
ロボタクシー
Optimus(人型ロボット)
Dojo・AI
売上(FY25)
948億ドル
売上成長(前年比)
−3%
営業利益率
約4.6%
予想PER
約180

数値の基準時点:決算=FY2025(2025年12月期、2026年1月発表・米国基準)/ 株価・指標=2026年6月下旬時点の概算。出所:Tesla 決算リリース・10-K、各金融情報サイト。ドル建て・四半期で大きく動くため、最新の一次情報をご確認ください。

いそがしい人へ
  • 01テスラはEV(電気自動車)の先駆者。オルカンでも上位常連(約1.2%)の中身です。ただし主力はあくまで自動車で、売上の約7割を占めます。
  • 02FY2025(2025年12月期)は売上948億ドル(−3%)=創業以来はじめての減収。値下げ競争で営業利益率は約17%→約4.6%に低下、純利益も約46%減りました。
  • 03配当も自社株買いもなし(全額を成長へ再投資)。見るべきは成長と利益率ですが、予想PERは約180倍・実績では約350倍。利益ではなくロボタクシー/AI/Optimusの将来期待で買われている点が最大の論点です。
01 / そもそも何の会社?

EVの先駆者が、
“AI・ロボット企業”を名乗り始めた。

テスラは、もともとEV(電気自動車)を大量生産して世界に広めた会社です。いまも売上の大半は自動車。ですが会社自身は「単なる自動車メーカーではなく、自動運転・AI・ロボットの会社になる」と語り、株価もその将来に賭けて動いています。

ポイントは、テスラを「いまの利益」で測ると割高すぎて見えること。市場は、自動車のもうけよりもロボタクシーやOptimus(人型ロボット)という“未来のオプション”に値段を付けています。だから株価の振れ幅も大きい。

2003

創業

米シリコンバレーで創業。「EVは退屈」という常識を、速くて格好いい電気自動車で覆すことを目指しました。

2008

Roadster

イーロン・マスクが主導。最初の量産EVRoadsterを発売し、存続の危機を乗り越えます。

2012〜

Model S / モデル量産化

高級セダンModel Sでブランドを確立。その後Model 3/YでEVの大量生産に踏み込みます。

2020〜21

黒字定着・株価急騰

量産が軌道に乗り継続的な黒字へ。株価が急騰し、時価総額は自動車業界で世界一に。

2023〜24

値下げ競争・減速

EV競争の激化と需要鈍化に対応して大幅値下げ。販売台数は頭打ちになり、利益率が低下し始めます。

2025〜

“自動車会社”からの転換を宣言

ロボタクシー・FSD・Optimusを成長の軸に。2025年は初の減収。市場の関心は完全に「将来の賭け」へ移りました。

02 / どうやって稼ぐ?

いまの稼ぎは、約7割が「自動車」。

テスラの売上は、いまもEV(自動車)が中心です。ただし、伸びているのはエネルギー貯蔵サービス(充電・FSD等)。そして将来の主役としてロボタクシー・Optimusを育てています。

自動車(EV)

Model 3/Y を中心とした電気自動車。売上の約7割を占める主力ですが、2025年は値下げと競争で約−10%と振るわず、利益率も低下しました。

エネルギー(発電・蓄電)

大型蓄電池Megapackや家庭用Powerwall。2025年は約46.7GWhを設置(+約49%)し、売上も+約27%といちばん速く伸びる柱に育ちつつあります。

サービス・その他

スーパーチャージャー(充電網)、FSDのソフト課金、保険、中古車など。台数が増えるほど積み上がる“ストック型”の収益で、+約19%と堅調です。

将来の賭け(ロボタクシー・Optimus)

自動運転のロボタクシーと人型ロボットOptimus。今はほぼ売上ゼロですが、市場が高いPERを正当化する“将来オプション”の中心です。

※ テスラの強みは、EVを自前で大量生産する力(ギガファクトリー)と、走行データを集めて鍛えるFSD(自動運転ソフト)、そして世界最大級の充電網を一体で持つこと。車を売るほどデータとソフトが強くなる構図です。

03 / 売上の構成

どこで稼ぎ、どこが伸びているか。

売上の構成を見ると、まだ自動車への依存が大きいことが分かります。裏を返せば、EVの販売・値段しだいで業績が大きく動くということ。だからエネルギーとサービスの成長が注目されます。

部門別売上の構成

FY2025(2025年12月期)/部門別売上の概算・億ドル
自動車(EV) 73% エネルギー(発電・蓄電) 14% サービス・その他 13%
主力(自動車)エネルギー(高成長)サービス・その他

※ 概算イメージ。自動車が約7割(約695億ドル)、エネルギーとサービスが各々約13%。成長率はエネルギー(+約27%)・サービス(+約19%)が速く、自動車(約−10%)を補う形です。

3つの役割で読み解く

「成長レンズ」では、配当より伸びと持続性を見ます。3分類で整理します。

主力

減速・改善途上
自動車(EV)
Model 3 / YModel S / XCybertruck

売上の約7割。値下げで台数を守ったぶん利益率が大きく低下。直近は粗利率がやや持ち直したものの、成長は鈍化しています。

高成長

次の柱
エネルギー(発電・蓄電)
MegapackPowerwall太陽光

大型蓄電池が世界で急増。+約27%と全部門で最速で伸び、利益率も改善余地が大きい注目の領域です。

将来の賭け

まだ売上ゼロ級
ロボタクシー・FSD・Optimus
自動運転ソフト課金人型ロボット

いまは利益にほぼ寄与しませんが、株価が織り込む“未来”の中心。成功すれば桁違い、失敗すれば期待倒れの両極です。

いまの立ち位置

「自動車会社」と「未来オプション」の二重構造

足元の業績は成熟しつつあるEVメーカーそのもの。一方で株価はまだ存在しない事業(ロボタクシー・Optimus)の成功を相当に織り込んでいます。

この「現実の数字」と「将来への賭け」のギャップこそ、テスラ株を理解する最大のカギです。

出所:Tesla FY2025 決算リリース・各社報道。構成比は概算で、四半期ごとに変動します。

04 / 最新決算を読む(成長が主役)

初の減収。利益率は“ピークの4分の1”に。

成長株では「どれだけ速く伸びているか・利益率は高いか」を見ます。FY2025(2025年12月期)は、その両方にはっきりブレーキがかかりました。良い面と悪い面を分けて読みます。

売上高(FY25)
948億ドル
−3% 前年比(初の減収)
純利益(FY25)
38.6億ドル
前年比 約−46%
営業利益率
約4.6%
ピーク(約17%)から低下

売上高の推移と来期予想

単位:億ドル / 年次(12月期)
0 300 600 900 1,200 815 FY22 968 FY23 977 FY24 948 FY25 1,050 FY26予 会社予想
実績市場予想(FY26)

FY2022の815億ドルから伸びてきましたが、FY2025は948億ドルと創業以来はじめての前年割れ。EV競争と値下げが効きました。市場はFY2026の再増収(約1,050億ドル)を見込みますが、予想は変動します。

注意して読む

「もうけが細った」のが最大の変化

かつて約17%あった営業利益率は約4.6%まで低下。需要鈍化に値下げで対応したため、台数を守っても1台あたりのもうけが減ったのです。純利益も約46%減りました。

EVは競争の激しい製造業でもあり、ソフト企業のような高利益率を当然には期待できません。

それでも良い面

現金は稼ぎ、伸びる柱も育つ

利益は減ってもフリーCFは約62億ドルとプラスを確保。エネルギー(+約27%)とサービス(+約19%)は二桁成長で、自動車一本足からの脱却が少し進みました。

稼いだ現金は配当でなく、工場・AI・ロボタクシー開発へ再投資しています。

出所:Tesla FY2025 決算リリース・10-K(2026年1月発表)。金額は概算・ドル建て。販売台数は約164万台(前年比 約−9%)。

05 / 来期はどうなる?(ガイダンス)

会社の“見通し”は、数字より「未来の製品」。

米国企業は来期の見通し(ガイダンス)を語ります。ただしテスラの場合、明確な売上目標よりロボタクシーの拡大・Optimusの量産・新型の低価格車といった「次の製品」に重心があります。

市場予想 売上(FY2026=2026年12月期)
約1,050 億ドル
減収から再増収へ戻る、というのが市場の前提(予想は変動)
エネルギー貯蔵の高成長 + 低価格車・ロボタクシーが鍵

見通しを読む3つの注記

① テスラの株価は台数や利益より「自動運転の進捗」に反応しがち。決算より製品イベントで動くことも多い。

EV補助金・税額控除の縮小や競争激化で、自動車の見通しは下振れしやすい。

③ ロボタクシーやOptimusは「いつ・どれだけ稼ぐか」が極めて不確実。会社の目標と実現は分けて見るのが大切です。

06 / 株価と「なぜ超高PERか」

利益は減ったのに、PERは“桁違い”に高い。

成長株のものさしは、割安かどうか(PBR)ではなく「高いPERが将来の成長で正当化されるか」。テスラはその是非が最も激しく問われる銘柄です。

株価の推移(2026年・ドル)

終値ベースの主要な節目/単位:ドル(概算)
300 350 400 450 500 460 1月 360 3月 395 4/22 415 5月 380 6/26
株価(ドル)決算発表(Q1・4月)
直近の株価(6月下旬)
約380ドル
6/26 終値 $379前後
時価総額
約1.4兆ドル
自動車では世界最大級
52週レンジ
289–499ドル
値動きが大きい

成長レンズの指標 ― ただし「将来期待」が大半

米国の成長株は配当が低く、PERも高いのが普通。S&P500平均PERは約20〜22倍、メガテックは30倍超も珍しくありません。とはいえテスラの約180倍は別格で、利益でなく未来を買っている水準です。

売上成長率前年比
−3%

成長株で最重要。2025年は初の減収。再加速できるかが当面の焦点。

営業利益率収益の質
約4.6%

ピークの約17%から低下。値下げ競争でEV事業のもうけが細った。

予想PERforward PER
約180

S&P500(約20倍)の何倍も高い。利益でなく将来期待の塊。

実績PERtrailing
約350

足元の利益で割ると約350倍。いかに利益で説明できないかを示す。

PSR株価売上倍率
約15

時価総額が売上の何倍か。自動車メーカーとしては桁外れに高い。

EPS1株利益
約1.08ドル

1株が生む利益(FY25・GAAP)。前年の約2.04ドルから半減した。

FCFフリーCF
約62億ドル

稼ぐ現金はプラス。ただし配当でなく成長投資に全額回す。

配当還元
なし

配当も自社株買いもゼロ。稼ぎは全額を再投資に充てる方針。

いちばんの注目点

「高PER」は、むしろ上がってしまった

NVIDIAは利益が株価より速く伸びてPERが下がりました。テスラは逆で、株価は高止まり・利益は減少。結果、実績PERは数年前の約34倍から約350倍へ急騰しました。これは「いまの利益では説明できない」という危険信号にも、「未来への先行投資」という見方にもなります。下のチャートはそのイメージです。

0 100 200 300 400 34 FY22 58 FY23 198 FY24 350 現在

NVIDIAとは真逆。株価が高止まりする一方で利益が大きく減ったため、実績PERは約34倍→約350倍へ急騰しました。いまのテスラは足元の利益では説明できない水準で、ロボタクシー・AI・人型ロボット(Optimus)の将来期待で買われています。

出所:各金融情報サイト(株価・指標は2026年6月時点の概算、ドル建て)。PER/PSRは集計元・予想の置き方で大きく変わります。株価の節目・PER推移は概算です。

07 / 他のメガテック・市場と比べる

「成長は鈍く、PERは最高」という変わり種。

指標は比べて初めて意味を持ちます。S&P500(市場平均)メガテックに当てると、テスラの「成長は遅め・利益率は低め・なのにPERは突出」という独特の位置が見えます。

成長レンズで比較

バーの長さは水準のイメージ(概算)
売上成長率前年比(高いほど成長)
テスラ
−3%
メガテック平均
約15%
S&P500平均
約6%
予想PER高いほど割高(将来期待)
テスラ
約180倍
メガテック平均
約30倍
S&P500平均
約21倍
営業利益率高いほど“質”が高い
テスラ
約4.6%
メガテック平均
約30%
S&P500平均
約13%

※ メガテック=Apple・Microsoft・Alphabet・Amazon・NVIDIA等の目安。S&P500平均=概算。集計元・時点で変動します。

オルカン上位を実数で並べる(概算)

同じ「オルカン上位」でも、テスラの数字は異質です。成長は最も遅いのに、PERは断トツで高い。

銘柄オルカン比率時価総額予想PER売上成長
テスラTSLA 約1.2%約1.4兆ドル約180倍−3%
NVIDIANVDA 約4.9%約4.7兆ドル約25倍+65%
AppleAAPL 約4.3%約4.2兆ドル約30倍約5%

他のオルカン上位は成長や利益に見合ったPER。テスラだけが足元の業績と株価が大きく乖離し、純粋に「未来への賭け」になっています。

08 / 市場・アナリストの評価

評価は真っ二つ。目標株価の差が極端。

アナリストは1年後の目標株価と投資判断を出します。テスラは「中立」が多く、強気と弱気の目標株価の差がきわめて大きいのが特徴です。

投資判断(レーティング)の内訳

「買い」と「中立」が拮抗し、売りも一定数。

強気・買い
やや多い
中立
最多級
弱気・売り
一定数

※ NVIDIAのような「強い買い」一色ではなく、意見が割れるのがテスラの特徴(集計元・時点で変動)。

目標株価(1年後・ドル)

慎重派
200 ドル
平均(コンセンサス)
410 ドル台
強気派
600 ドル

平均目標株価は直近株価(約380ドル)よりやや上。ただし強気派(600ドル)と慎重派(200ドル)で3倍もの差。ロボタクシー/AIの成否で評価が真っ二つです。

テスラへの評価は、つまるところ一点に尽きます——「ロボタクシーとOptimusは、本当に巨大事業になるのか」。そこを信じるか否かで、同じ株が「割安」にも「バブル」にも見えるのです。

出所:各証券・金融情報サイトのコンセンサス(2026年6月時点の概算)。目標株価・判断は各社・時点で大きく異なります。

09 / 投資信託での位置づけ

あなたのオルカン・S&P500にも、しっかり入っている。

テスラは、日本で大人気のインデックス投信の上位常連です。「個別株は買っていない」人も、投信を通じて間接的に保有しています。

組入約10位
全世界株式(オルカン)で組入比率 約1.2%=上位常連。S&P500連動ファンドでも上位の構成です。EVやAIをテーマにした投信では中核銘柄として、ほぼ必ず登場します。

パッシブインデックス投信での採用

時価総額が大きい=指数での比率も大きい

  • 全世界株式(オルカン)組入比率 約1.2%で上位常連。世界中の株の中でも大きく持たれている1社。
  • S&P500米国500社の指数でも上位の構成。米国ハイテク株の主役の一つ。
  • ナスダック100ハイテク中心の指数では中核。値動きの主役になりやすい。

時価総額が大きいほど、指数の中での比率も大きくなります。テスラは値動きが激しいため、オルカンやS&P500の“振れ”の一因にもなります。

アクティブテーマ型ファンドの定番

EV・AI・クリーンエネルギーの中核

  • EV・次世代モビリティ ファンド電気自動車テーマの代表として、ほぼ必ず上位に。
  • AI・破壊的イノベーション ファンドロボタクシー・自動運転・ロボットの本命として人気。
  • クリーンエネルギー ファンド蓄電池・太陽光(エネルギー事業)の観点でも組み入れられる。

出所:eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)月次レポート(2026年5月末基準)、各運用会社の交付目論見書等。組入比率・順位は毎月変動します。

10 / 投資家からの評判

「未来をつくる会社」か、「高すぎるEV屋」か。

テスラほど見方が割れる銘柄はありません。熱狂的な信奉者と、冷静な懐疑派。両方の言い分を並べると、この株の性格が見えてきます。

強気派の見方

「AI・ロボットの覇者になる」
  • FSDと走行データで自動運転の最前線。ロボタクシーが実れば“移動のプラットフォーム”になり得る。
  • Optimus(人型ロボット)が量産化すれば、自動車をはるかに超える巨大市場が開ける。
  • エネルギー貯蔵が+約27%と急成長。EV以外の柱が育ちつつある。
  • ±強いブランドと自前の量産力・充電網。単なる自動車メーカーではない、という評価。

慎重派の見方

「利益に対して高すぎる」
  • 予想PER約180倍・実績約350倍は歴史的高水準。期待が剥がれれば下げも大きい。
  • 本業のEVは初の減収・利益率低下。BYDなど中国勢との競争も激しい。
  • ロボタクシー・Optimusは「いつ稼ぐか」が不透明。実現が遅れれば期待倒れに。
  • ±イーロン・マスク個人への依存・政治的言動が、業績と評判を揺らすリスク。

出所:各種報道・市場コメント(2026年6月時点)。評価は時点で大きく変わります。

11 / ブランド・量産・FSDという堀

テスラの“堀”は、いまの堀と将来の賭けの二段。

テスラの強みは、チップ1個のような単純な独占ではありません。ブランド・量産力・充電網という「いまの堀」と、FSD/走行データを起点にした「将来の賭け」の二段構えです。

テスラの最大の資産は、世界中を走る車から集まる膨大な走行データ。これでFSD(自動運転ソフト)を鍛え、いずれロボタクシーとして“走るたびに課金”する——という構想が、超高PERの根拠になっています。

ただしこれはまだ実現していない賭け。だから足元では「強いブランド」「自前の量産(ギガファクトリー)」「世界最大級の充電網」という現実の堀が、競争の中でどこまで利益を守れるかが問われています。

堀の強みいまある優位

  • ブランド:EV=テスラという強い想起。値下げしても一定の需要を保つ。
  • 量産力:ギガファクトリーで内製・大量生産。コストを自分で下げられる。
  • 充電網:世界最大級のスーパーチャージャー。他社も使う“標準”に。
  • FSD・データ:走行データの蓄積で自動運転ソフトを継続的に鍛える。

堀への挑戦それでも揺らぐ

  • EV競争:BYDなど中国勢や既存メーカーが安く高品質なEVを投入。
  • 値下げ圧力:価格競争で利益率が低下。製造業ゆえ高採算は続きにくい。
  • 自動運転の規制・安全:ロボタクシーは事故・規制で実用化が遅れ得る。
  • 人依存:イーロン・マスク個人への依存度が高く、評判リスクが大きい。
このシリーズの中で

各社には“堀”がある

NVIDIAはCUDA(ソフト基盤)、Appleはエコシステム、Microsoftはクラウドと法人基盤——というように、巨大企業にはそれぞれの「崩れにくい堀」があります。テスラの堀はブランド+量産力+充電網+FSD/データ。ただし他社より「将来の賭け」の比重が大きいのが特徴です。オルカン上位の見どころは、この「堀の強さと種類」にあります。

12 / マクロ環境との接点

EV需要・補助金・競争・自動運転規制。

テスラの業績は、EV市場の波と各国の政策・規制に直結します。追い風と逆風を整理します。

自動運転・AI

最大の期待

ロボタクシーやOptimusが実れば、自動車を超える市場が開ける——という期待が株価の中心。

逆に進捗が遅れると、「期待だけ」だった反動で株価が最も大きく動きます。

エネルギー貯蔵

成長領域

再エネ普及で大型蓄電池(Megapack)の需要が拡大。テスラ内で最速の成長分野です。

電力インフラ全体の追い風を受けやすく、EV以外の柱になり得ます。

競争・補助金縮小

逆風

BYDなど中国勢や既存メーカーが安く高品質なEVを投入。価格競争で利益率が削られます。

各国のEV補助金・税額控除の縮小も、需要と採算の逆風になります。

規制・人・政治

不確実性

ロボタクシーは自動運転の安全規制がカギ。事故やルール次第で実用化が前後します。

イーロン・マスクの言動・政治的立場が、ブランドや株価に影響することもあります。

出所:各種報道・会社資料(2026年6月時点)。マクロの影響は不確実性が高く、方向感を示すものです。

13 / 5年・10年・20年の立ち位置

「EVの会社」から「自律・ロボットの会社」へ?

テスラの長期の方向性です。近い将来は会社の戦略遠い将来は不確実な見立てとして区別して読んでください。

いま / 2026
減速したEV王者
現在地
実績
  • 売上948億ドル・初の減収(−3%)
  • 自動車が約7割・利益率は低下
  • エネルギー貯蔵が+約27%と急成長
〜5年
自律・低価格車へ
会社戦略
戦略
  • ロボタクシー/FSDの本格展開を狙う
  • より安いEVで台数を取り戻す計画
  • Optimusの量産を立ち上げる
〜10年
AI・ロボット企業
ビジョン
ビジョン
  • 自動運転が普及し“移動のサービス”で稼ぐ
  • 人型ロボットが新たな柱に育つ構想
  • エネルギー(蓄電)が安定収益に
〜20年
分岐点
構造シナリオ(推定)
見立て
  • 賭けが当たればAI・ロボットの巨人
  • 実現が遅れれば“高すぎたEV屋”に逆戻りも
  • 競争・規制・人依存で業績が大きく上下しうる

近い将来は会社の戦略に沿いますが、達成は環境次第。遠い将来ほど不確実性が大きく、ここでの記述は一つのシナリオです。テスラは特に「将来の賭け」の比重が大きい点に注意してください。

14 / 為替と株主還元

ドル建ての株。還元は「配当も自社株買いもなし」。

米国株はドル建て。日本のあなたが(投信や個別株で)持つと、株価だけでなく円高・円安の影響も受けます。そしてテスラは、稼ぎを株主に配らず全額を成長へ再投資する会社です。

為替(ドル円)の効き方

円安になると、円換算の評価額は増える(同じ株価でも円では高くなる)。逆に円高は目減り要因。

② オルカンやS&P500も中身はドル資産。あなたの投信の値動きの一部は「為替」でできています。

③ 株価が上がっても円高ならリターンは薄れる——「株 × 為替」の二段構えで見るのがコツです。

株主還元は「ゼロ」=全額再投資

テスラは配当を出さず、まとまった自社株買いも行いません。稼いだ現金は、工場・AI・自動運転・Optimusの開発に全額を再投資します。

NVIDIAなど他のメガテックが「自社株買い」で報いるのに対し、テスラはさらに徹底した“成長再投資型”。年間の設備投資は200億ドル超の計画です。

=「還元ゼロ=株主軽視」ではなく、配当の代わりに将来の成長で報いるという考え方。日本の高配当株とは正反対です。

出所:Tesla 決算リリース・各金融情報サイト(2026年6月時点)。配当・自社株買いの方針は会社の判断で変わります。

15 / リスクと注意点

夢が大きいぶん、見ておくべき4つのリスク。

将来性に賭ける銘柄ですが、その分だけリスクも大きい。良い面だけでなく、ここを併せて見るのが大切です。

01

超高バリュエーション(将来期待先行)

予想PER約180倍・実績約350倍は歴史的高水準。株価の大半は「ロボタクシー/AIの成功」を織り込んでおり、その期待が少しでも剥がれると下げは大きくなりやすい。「良い会社」と「良い株価」は別問題です。

02

本業(自動車)の減速と競争

2025年は初の減収・利益率低下。BYDなど中国勢や既存メーカーとの価格競争が激しく、EVは製造業ゆえ高採算を保ちにくい。補助金縮小も逆風です。

03

ロボタクシー/Optimusの実現不確実性

超高PERの根拠である自動運転・人型ロボットは、規制・安全・技術の壁が高く「いつ・どれだけ稼ぐか」が不透明。実現が遅れれば期待倒れになり得ます。

04

人依存・政治・為替

イーロン・マスク個人への依存度が高く、言動や政治的立場がブランドと株価を揺らす。さらにドル建てのため、円高/円安の為替もリターンに効きます。

テスラは「未来への期待が、いまの利益をはるかに先回りしている」銘柄。オルカンの中でも値動きが激しい中身だからこそ、夢と現実の両方の目で見るのが近道です。

/ 3行でまとめると

このページの要点。

正体:テスラはEV(電気自動車)の先駆者で、オルカン上位常連(約1.2%)。ただし会社は「自動運転・AI・ロボットの会社になる」と宣言し、株価もその将来に賭けて動いている。

決算:FY2025は売上948億ドル(−3%)=創業以来はじめての減収。値下げ競争で営業利益率は約17%→約4.6%へ低下、純利益も約46%減。一方でエネルギー貯蔵(+約27%)とサービス(+約19%)は二桁成長。

指標:成長レンズで見ると、成長は鈍く利益率も低いのに予想PERは約180倍・実績約350倍。NVIDIAと真逆で、利益でなくロボタクシー/AI/Optimusの将来期待で買われている点が最大の論点。

堀:強みはブランド+自前の量産力+世界最大級の充電網+FSD/走行データ。ただし他社より「将来の賭け」の比重が大きく、EV競争・規制・人依存が長期の挑戦。

リスク:超高バリュエーション・本業の減速と競争・ロボタクシー等の実現不確実性。配当も自社株買いもなく全額を成長へ再投資。ドル建てなので為替も効く。夢と現実の両目で。