日本一の「家をつくる会社」。
積水ハウスとは何者か。
積水ハウス(証券コード 1928)は、戸建・賃貸・リフォームを手がける日本最大の住宅メーカーです。累計の建築戸数は世界最大級。近年は米国の戸建大手M.D.C.社を買収し、アメリカでも上位のホームビルダーに。さらに15期連続増配を見込む高配当株でもあります。名前は知っていても中身は知らない——そんな人に向けて、決算の事実・株価・配当・米国戦略をやさしく順番にほどいていきます。
数値の基準時点:決算=2026年1月期(2026/3/5発表・日本基準/積水ハウスは1月期決算)/ 株価・指標=2026年6月下旬時点(株価約3,270円)の概算。出所:積水ハウス 決算短信・決算説明会資料・第7次中期経営計画、各証券・金融情報サイト。数値は変動するため最新の一次情報をご確認ください。
- 01積水ハウスは日本最大の住宅メーカー。戸建・賃貸・リフォーム・開発に加え、米国の戸建大手M.D.C.社を買収し、全米16州で展開するホームビルダーに。
- 0226.1期は売上4.2兆円・純利益2,321億円と過去最高。ただし27.1期は米国の金利高で国際事業が苦戦し純利益−6.1%予想(営業利益は最高更新の見込み)。
- 0315期連続増配(27.1期145円予・利回り約4.4%)。配当下限145円の累進的な還元で、PBR約1倍の高配当の住宅最大手と覚えればOK。
プレハブ住宅のパイオニアから、
世界最大級のハウスメーカーへ。
積水ハウスは、工場で部材をつくり現場で組み立てる「プレハブ住宅」を日本に広げた会社のひとつ。そこから60年余りで、戸建・賃貸・リフォーム・街づくり・海外までを手がける住まいの総合企業になりました。累計の建築戸数は世界でも最大級です。
覚えておくと早いのは、積水ハウスが「家を建てて終わり」の会社ではないこと。建てる(請負)→貸す・管理する(ストック)→直す(リフォーム)→街をつくる(開発)→海外で建てる(国際)と、住まいに関わる流れをまるごと事業にしています。
積水ハウス産業として創業
積水化学工業の住宅事業から独立して誕生。プレハブ住宅のパイオニアとして、品質の高い家を量産する仕組みを築きました。
戸建・賃貸で全国へ
鉄骨系・木造系(シャーウッド)の戸建に加え、賃貸住宅「シャーメゾン」を展開。累計建築戸数で世界最大級のハウスメーカーに成長しました。
「ストック」と「街づくり」へ
建てるだけでなく、賃貸管理・リフォームといった積み上がる収益(ストック型)と、マンション・都市開発(開発型)を強化。景気に左右されにくい体質づくりを進めます。
連続増配の常連に
利益成長に合わせて毎年のように増配。1株配当は十数年で7倍超に増え、高配当株として個人投資家の支持を集めました。
米国戸建大手M.D.C.を買収
米国のホームビルダーM.D.C. Holdingsを約7,500億円で買収。全米16州・年約1.5万戸を供給する、米国でも上位のホームビルダーになりました。
第7次中計を始動
2026〜2028年度の第7次中期経営計画を策定。最終年度に売上高5兆円超・純利益3,000億円・ROE12%台後半を掲げ、米国とストックを成長の軸に据えます。
「建てる・貸す・直す・海外で建てる」。
住まいの全部で稼ぐ。
積水ハウスの決算は、大きく請負型(戸建・賃貸)/ストック型(管理・リフォーム)/開発型/国際に分かれます。国内の安定した稼ぎに、米国戸建という成長エンジンが乗った——これが今の姿です。
戸建住宅(請負型)
注文住宅が中心。鉄骨系の「イズ」、木造の「シャーウッド」など。高付加価値の提案で1棟あたりの平均単価が上がり、26.1期は注文住宅の単価が約5,248万円→約5,642万円へ上昇しました。
賃貸・事業用建物(請負型)
賃貸住宅「シャーメゾン」やオフィス・商業施設の建築。都市部に集中した戦略で受注が順調で、26.1期の営業利益は前期比7.4%増の878億円と好調でした。
ストック型(賃貸管理・リフォーム)
建てた後に積み上がる収益。賃貸住宅の管理戸数と、リフォーム需要を取り込みます。景気に左右されにくい安定収益で、26.1期の営業利益は約969億円と全社最大の柱に。
国際(米国戸建が主役)
M.D.C.社の買収で全米16州・年約1.5万戸を供給する戸建大手に。日本で培った技術を米国の木造住宅へ移植します。ただし足元は米住宅ローン金利の高止まりで苦戦(次節)。
開発型(マンション・都市開発)
分譲マンション、オフィス、ホテル、大規模な街づくり。土地を仕入れて開発・分譲する事業で、26.1期の営業利益は約949億円(前期比+35%)と好調。景気や金利の影響は受けやすい分野です。
※ セグメントの呼び方や区分は会社の開示に基づく整理です。請負型・ストック型・開発型・国際という4つの性格で押さえると、この会社の稼ぎ方が見えてきます。
安定(ストック)が最大の柱。
成長は米国と開発。
営業利益の構成を見ると、賃貸管理・リフォーム(ストック)が最大の柱で、請負(戸建・賃貸)がそれを支え、国際・開発が成長を担う、という構図です。安定・主力・成長の3つに束ねて整理します。
セグメント営業利益の構成
2026年1月期/セグメント営業利益の概算・億円※ あくまで概算イメージです。ストック(賃貸管理・リフォーム)が最大の柱に育ち、安定収益で全体を下支え。一方、成長の本命だった国際(米国戸建)は金利高で営業利益が前期比ほぼ半減し、26.1期は国内が稼ぎを引っ張りました。
3つの役割で読み解く
同じ「稼ぎ」でも、景気や金利への強さが違います。3分類で見ると、積水ハウスが安定と成長のバランスをどう取ろうとしているかが分かります。
安定
ディフェンシブ管理戸数や改修需要が毎年積み上がるストック型。景気が悪くても需要が消えにくく、収益が崩れにくいのが強み。今や全社最大の利益源です。
主力
国内の本業日本最大の住宅メーカーとしての本業。高付加価値・高単価へ舵を切り、戸数が伸びなくても単価上昇で利益を確保。国内人口減という逆風とは常に向き合います。
成長
伸びしろ/振れも大成長の中心は米国の戸建。市場は日本よりはるかに大きい一方、住宅ローン金利の動きで業績が大きく振れます。開発も金利・市況の影響を受けます。
国内で守り、米国で攻める——その途中
国内はストックと高単価戸建で安定した土台を築けています。問題は成長エンジンの米国。金利高で足元は苦戦していますが、市場規模の大きさから中長期の伸びしろは大きいと会社は見ています。
つまり今は「巨額投資した米国が、金利低下とともに花開くのを待つ」局面。ここが評価の分かれ目です。
出所:積水ハウス 2026年1月期 決算短信・決算説明会資料。セグメント営業利益・構成は概算で、区分・金額は年により変動します。
売上・利益とも過去最高。
でも、中身は“まだら模様”。
2026年3月5日発表の通期決算(2025年2月〜2026年1月/積水ハウスは1月期決算)です。売上・営業利益・純利益のすべてが過去最高。ただし国内が好調な一方、米国は金利高で苦戦という、明暗の分かれる中身でした。
純利益の推移と来期予想
単位:億円 / 親会社株主に帰属する当期純利益純利益は4期連続で増え、26.1期に過去最高(2,321億円)を更新。ただし27.1期は米国住宅の苦戦と持分法利益の剝落で約2,180億円へ微減の見込みです(営業利益は最高更新を見込む)。
国内が高単価・ストックで稼いだ
戸建は高付加価値提案で1棟単価が上昇し増益。賃貸・事業用も都市部で受注好調。賃貸管理・リフォーム(ストック)は売上・利益とも大きく伸び、全社を引っ張りました。
経常利益は前期比8.7%増の3,278億円。国内事業の地力が、過去最高益を支えました。
頼みの米国(国際)が金利高で半減
成長の本命のはずの国際事業の営業利益は、前期比約50%減の391億円。米国の住宅ローン金利の高止まりで顧客が様子見になり、値引き(インセンティブ)コストもかさみました。
M.D.C.買収にともなうのれん償却や在庫の原価計上も利益を圧迫。巨額買収の“消化”の途中であることがうかがえます。
出所:積水ハウス 2026年1月期 決算短信・決算説明会資料(2026/3/5)、各社報道。金額は概算を含みます。
会社予想は、純利益が微減。
でも営業利益は最高更新。
会社が示す2027年1月期の見通しです。会社予想は「約束」ではなく「いまの計画値」。本業の力を映す営業利益は伸びる一方、純利益は特殊要因で減る——この“ねじれ”がポイントです。
予想を読むうえでの3つの注記
① 営業利益は過去最高を更新の見込み。国内の高単価戸建・ストックが伸び、本業の稼ぐ力は落ちていません。
② 純利益が減る主因は持分法による投資利益の剝落など。本業の悪化というより、一時的・会計的な要因が大きい点に注意です。
③ カギは米国の住宅ローン金利。金利が下がれば国際事業が反転し、上振れ余地。逆に高止まりが続けば、米国の戻りは遅れます。
3,300円前後。年の前半は、じり安。
2026年の株価は、2月に年初来高値3,832円を付けた後、米国住宅の苦戦が嫌われて6月に3,181円まで下げました。足元は3,300円弱です。指標もやさしく整理します。
株価の推移(2026年)
終値ベースの主要な節目/単位:円この株は割安?割高? — 主要指標をやさしく
数字は「市場平均(東証プライムの概算)」と比べると意味が分かります。積水ハウスはPERもPBRも市場平均より低めで、配当の厚みが魅力という位置づけです(株価約3,270円で計算した概算)。
1株が1年で生む利益。26.1期 約358円→27.1期予 約336円(米国の減益で小幅減少)。
1株あたりの純資産。株価(約3,270円)はこれとほぼ同じ水準=PBR約1倍。
利益の何年分か。市場平均(約16倍)より低く、割安寄りの目安。
純資産の何倍か。ちょうど1倍前後。市場平均(約1.4倍)より低い水準です。
株主のお金をどれだけ増やしたか。8%超なら一般に良好。積水ハウスは10%台で堅調。
株価に対する年間配当の割合。市場平均(約2%台)を大きく上回る高配当です。
総資産の4割超が自前資本。大型買収後も健全な水準を保っています。
利益のうち配当に回す割合。中期平均で40%以上を維持する方針です。
PBRは約1倍。割安というより「適正圏の高配当」
積水ハウスのPBRは、過去おおむね0.7〜1.4倍で推移してきました。いまはちょうど1倍前後。極端な割安ではなく、純資産なみの株価で、約4.4%の配当が受け取れる——そこに価値を見出すタイプの株です。米国が反転すれば、再評価の余地もあります。
出所:各金融情報サイト・積水ハウス IR資料(指標は2026年6月時点の概算、株価は遅延あり)。EPS/BPS/PER等は集計元・基準により表記が異なる場合があります。1株あたりの数値は概算です。
住宅大手の中では「高配当・低PBR」。
ライバルは大和ハウス工業や住友林業など。積水ハウスは規模で国内トップ級、指標では利回りの高さとPBRの低さが目立ちます。
指標くらべ(自社/同業/市場)
バーの長さは水準のイメージ※ 住宅大手=大和ハウス工業・住友林業等の目安。市場平均=東証プライムの概算。集計元・時点で変動します。
住宅大手を並べる(概算・目安)
3社とも米国戸建に進出し、国内では成熟市場と向き合う点が共通。積水ハウスは利回りの高さが際立ちます。
| 会社(コード) | 時価総額 | 予想PER | PBR | 配当利回り |
|---|---|---|---|---|
| 積水ハウス1928 | 約2.1兆円 | 約10倍 | 約1.0倍 | 約4.4% |
| 大和ハウス工業1925 | 約3兆円 | 約11倍 | 約1.2倍 | 約3.6% |
| 住友林業1911 | 約1兆円 | 約10倍 | 約1.4倍 | 約3.1% |
規模では大和ハウスが上ですが、配当利回りは積水ハウスが最も高いのが特徴。「いちばん配当が厚く、PBRは控えめ」というのが、ざっくりした立ち位置です(数字は概算)。
評価は「買い」がやや優勢。
アナリストは1年後の目標株価と投資判断を出します。積水ハウスは国内の堅調さを評価する一方、米国の不透明感を織り込んで、強気と中立が混じる評価です。
投資判断(レーティング)の内訳
コンセンサスは「買い〜やや強気」。★★★★☆ 前後。
※ おおむね「強気4:中立5:弱気1」程度の構成(集計元・時点で変動)。国内の堅調さは評価されつつ、米国次第という慎重さも残ります。
目標株価(1年後予想)
平均目標株価はおよそ3,800〜3,900円で、直近株価(約3,270円)より15〜18%上。「国内は堅い、米国が戻れば見直し」という見方が多数です。
市場の関心はシンプルです——「米国の住宅ローン金利が下がり、買収したM.D.C.が利益を伸ばせるか」。配当は安心でも、株価がもう一段上がるには“米国の反転”が要ります。
出所:みんかぶ・各証券レーティング等(2026年6月時点の概算)。目標株価・判断は各社・時点で異なります。
指数にも高配当投信にも、定番で入る。
時価総額が大きく流動性も高いので、日本株のインデックスに組み入れられます。さらに高配当・連続増配を狙う投信では、まさに王道的な組入候補です。
パッシブインデックス投信・ETF
指数に採用 → 連動ファンドが自動的に保有
- 日経平均株価(225)代表的な大型株として採用。日経225連動のETF・投信が保有。
- TOPIX(東証株価指数)時価総額が大きく上位構成。TOPIX連動型の定番。
- JPX日経インデックス400ROE・資本効率・ガバナンス等で選ぶ“質”の指数にも採用。
時価総額が大きいほど、インデックスの中での比率も大きくなります。日本株インデックスを持っていれば、あなたも積水ハウスの株主というわけです。
アクティブ高配当・連続増配ファンド
高配当・累進的な還元を狙う投信の定番
- 高配当株ファンド利回り約4.4%・大型で安定。日本の高配当株ファンドの王道的な組入候補。
- 連続増配・累進系15期連続増配の見込みで、増配を続ける銘柄を集める投信に評価されやすい。
- バリュー(割安)株ファンドPBR約1倍・低PERで、割安修正を狙うバリュー投信の候補にも。
出所:各指数の構成銘柄、運用会社の交付目論見書・マンスリーレポート等。保有比率は時点で変動します。
国内では「鉄板の高配当株」。
海外勢は「米国戦略」を見る。
積水ハウスは国内の個人にとって“安心して持てる高配当株”の定番。一方、海外の機関投資家は、巨額を投じた米国戦略がうまくいくかを冷静に見ています。両者の目線を並べます。
国内の個人投資家
- +利回り約4.4%+15期連続増配の見込み。減配しにくい累進的な還元で、長期保有の高配当株として絶大な人気。
- +日本最大の住宅メーカーという安心感。生活に身近で、業績も国内の地力で底堅い。
- ±値動きは比較的おだやか。大きく増えにくいが、配当でじっくりというタイプ。
- -ここ1年は株価がじり安。米国住宅の不振と国内人口減への不安が重し。
海外の機関投資家
- +割安なバリュエーションと高い配当。PBR約1倍・利回り約4%超は国際的に見ても魅力的。
- +米国戸建市場への進出は、成熟した日本市場の外で成長を取りに行く前向きな一手と評価。
- -約7,500億円の大型買収の回収を警戒。金利高で苦戦が続けば、のれん負担が重くのしかかる。
- ±国内住宅市場の縮小は構造的な逆風。米国とストックでどこまで補えるかを見極め中。
株主の内訳(概算イメージ)
特徴は外国人比率が約4割と高いこと。グローバルな機関投資家に広く持たれており、海外の目線が株価に効きやすい銘柄です。比率は概算で、最新の開示をご確認ください。
財務と還元の素顔
大型買収後も健全な財務(26.1期・概算)。
- ROE(自己資本利益率)約11%
- 自己資本比率約42.7%
- 純利益(26.1期)2,321億円
- 売上高(26.1期)4兆1,979億円
- 1株配当(27.1期予)145円
ROEは10%台で堅調。約7,500億円の大型買収をこなしても自己資本比率は4割超を保ち、配当も増やし続ける——財務の余力が、高配当の信頼を支えています。
出所:積水ハウス 有価証券報告書・IR資料、各金融情報サイト。株主構成は概算イメージで、最新の開示をご確認ください。
高配当の住宅最大手が、
米国住宅に賭けている。
積水ハウスを語るうえで外せないのが、15期連続を見込む増配と、米国戸建への巨額投資。安定した国内の稼ぎで配当を着実に増やしながら、成長を海外に求める——この二刀流が積水ハウスの“顔”です。
1株配当は、十数年で約20円から145円(27.1期予)へと7倍超に増えました。中期平均の配当性向40%以上を維持し、第7次中計では年間配当の下限を145円に設定。利益が一時的に減っても、配当を下げない“累進的な還元”の姿勢を強めています。
その安定配当を支えるのが国内のストックと高単価戸建。そして次の成長を担うのが、2024年に約7,500億円で買収した米国のM.D.C.社です。日本より大きい米国市場で、「守りの高配当」と「攻めの米国」を両立させられるか——ここが積水ハウスの物語の核心です。
強み高配当×成長の二刀流
- 15期連続増配の見込み:減配しにくい累進的な還元で、長期保有の安心感が大きい。
- 利回り約4.4%:PBR約1倍の株価で、市場平均を大きく上回る配当が受け取れる。
- 米国という成長余地:成熟した国内の外に、はるかに大きい住宅市場を取りに行ける。
- 頑丈な財務:大型買収後も自己資本比率4割超。還元を続ける体力がある。
留意点“賭け”ゆえのリスク
- 米国の金利依存:住宅ローン金利が高止まりすると、国際事業の利益が大きく沈む。
- 大型買収の回収:約7,500億円ののれん。米国が伸びなければ重い負担に。
- 国内市場の縮小:人口減で国内の新築需要は長期的に細る構造。
- 成長の派手さは控えめ:基本は安定・高配当型。株価の急騰は期待しにくい。
各社には“顔”がある
INPEXの黄金株、JTの政府保有、三菱商事のバフェット、MUFGのモルガン・スタンレー、NTTの連続増配のように、各社にはその会社を象徴する“顔”があります。積水ハウスの顔は、高配当の住宅最大手でありながら、米国戸建という大きな賭けに出たこと。安定配当の安心感と、海外成長への挑戦が同居するタイプです。
米国金利・国内人口・資材・円安。
大きな波は、積水ハウスにどう効くか。
住宅会社だけに、金利と人口、為替の動きが業績に直結します。追い風と逆風を、両面から整理します。
米国の住宅ローン金利
最大の変数(両面)成長エンジン・米国戸建の業績を左右する最重要要因。金利が高いと買い控えが起き、値引きコストもかさんで利益が沈みます。
逆に金利が下がれば需要が戻り、買収したM.D.C.の利益が一気に伸びる可能性も。米国の住宅は“金利次第”です。
国内住宅市場の縮小
長期の逆風人口減と世帯数の頭打ちで、国内の新築着工は長期的に細る構造。本業の戸建はボリュームでの成長が難しくなります。
だからこそ会社は高単価化・リフォーム・賃貸管理(ストック)・海外に軸足を移しています。
国内の金利・インフレ
両面日銀の利上げで国内の住宅ローン金利が上がると、国内の住宅需要には逆風。開発事業の資金コストも増えます。
一方、インフレ局面では家賃や不動産の価値が上がりやすく、賃貸・開発にはプラスに働く面もあります。
資材コスト・円安
両面木材・鋼材など資材価格の上昇は建築コスト増の逆風。価格転嫁(単価上げ)が追いつくかがカギ。
円安は米国事業のドル建て利益を円換算で押し上げる追い風。海外比率が高まるほど、為替の影響も大きくなります。
出所:各種報道・会社資料等(2026年6月時点)。マクロの影響は不確実性が高く、方向感を示すものです。
「国内の住宅会社」から
「日米のホームビルダー」へ。
積水ハウスが描く長期の方向性です。近い将来は会社の計画、20年後は公表目標のない見立てとして、区別して読んでください。
- 売上4.2兆円・純利益2,321億円(過去最高)
- PBR約1.0倍・配当利回り約4.4%
- 米国買収で全米16州の戸建大手に
- 売上高5兆円超・純利益3,000億円を目標
- ROE12%台後半へ引き上げ
- 配当下限145円・配当性向40%以上を維持
- 米国戸建を国内に並ぶ成長の柱に育てる
- 国内はストック(管理・リフォーム)と高単価で深掘り
- ZEH・環境を競争力の軸に
- 国内の新築縮小を米国とストックで補えるかが最大の論点
- 米国で根づけばグローバルなホームビルダーに
- リスク:米国が伸びず“高配当だが伸びない国内会社”に留まる恐れ
近い将来は会社の方向性に沿っていますが、達成は金利・住宅市況次第で保証されません。20年後は不確実性が大きく、ここでの記述は一つのシナリオです。
15期連続増配。配当はこの会社の“軸”。
積水ハウスは利益成長に合わせて、配当を着実に増やしてきました。第7次中計では配当の下限を引き上げ、減配しにくい“累進的な還元”の姿勢を一段と強めています。
1株配当は十数年で約20円→145円(27.1期予)へと7倍超に。26.1期は144円(14期連続増配)、27.1期は145円予想で15期連続増配の見込みです。純利益が一時的に減る27.1期も、減配せず増配する姿勢が積水ハウスの特徴です。
第7次中計では1株あたり年間配当の下限を145円に設定(前年度実績144円を上回る水準)。利益が伸びればさらなる増配を目指す、累進的な還元方針です。あわせて自己株式の取得も、財務状況をふまえて機動的に実施する方針を掲げています。
※ 配当・自社株買いは会社の方針で、将来変わる可能性があります。連続増配は「過去の実績・予想」であり、今後を保証するものではありません。
出所:積水ハウス 2026年1月期 決算短信・第7次中期経営計画(2026/3/5)。配当性向・利回りは予想・株価からの概算です。
高配当の裏で、見ておくべき4つの論点。
安定した高配当株と言われる積水ハウスにも、弱点はあります。良い面だけでなく、ここを併せて見るのが大切です。
米国の金利と住宅市況
最大のリスク。成長の本命・米国戸建は、住宅ローン金利の高止まりで需要が冷え、26.1期の国際事業は営業利益が約半減。金利が下がらなければ、買収効果は出にくいまま。
大型買収(のれん)の回収
約7,500億円で買ったM.D.C.の、のれん償却や在庫の原価計上が利益を圧迫。米国が伸び悩めば、この負担が重くのしかかり、減損リスクも意識される。
国内住宅市場の構造的縮小
人口減と世帯数の頭打ちで、国内の新築需要は長期的に細る。高単価化・ストック・海外で補う計画だが、本業のボリューム成長は望みにくい。
金利・資材コストの上昇
国内の金利上昇は住宅ローン負担増で需要に逆風。木材・鋼材など資材高も建築コストを押し上げる。価格転嫁が追いつかなければ利益率が削られる。
積水ハウスは「安定した高配当株」に、米国という成長の賭けが乗った銘柄です。配当の安心感と、米国・国内市場という不確実性をセットで見る姿勢が、この会社を理解する近道です。
このページの要点。
正体:積水ハウスは日本最大の住宅メーカー。戸建・賃貸・リフォーム・開発に加え、2024年に米M.D.C.社を約7,500億円で買収し、全米16州で展開するホームビルダーに。
決算:26.1期は売上4.2兆円・営業利益3,414億円・純利益2,321億円と過去最高。ただし米国(国際事業)は金利高で営業利益が約半減し、明暗が分かれた。
来期:27.1期は営業利益が最高更新の見込みだが、持分法益の剝落などで純利益は約2,180億円(−6.1%)の予想。カギは米国の住宅ローン金利。
指標・還元:PER約10倍・PBR約1.0倍・利回り約4.4%の高配当株。15期連続増配の見込みで、配当下限145円・性向40%以上の累進的な還元が魅力。
未来:成長の本命は米国戸建。国内のストックと高単価で“守り”を固めつつ、巨額投資した米国が金利低下とともに花開くかが、評価の分かれ目。