一覧 INPEX入門 1605 / 東証P
総合解説・ゼロから読む

日本の石油・ガスを
世界で掘る会社。
INPEXとは何者か。

INPEX(証券コード 1605)は、世界各地で石油・天然ガスを探して・掘って・売る、日本最大のエネルギー開発会社(E&P)です。政府が「黄金株」を持つ特別な会社で、日本のエネルギー安全保障の要石。このページは、名前は聞くけれど中身は知らない——そんな人のために、決算の事実・株価・配当・脱炭素戦略をやさしく順番に解きほぐします。

イクシスLNG
原油
天然ガス
探鉱
国内ガス
アバディLNG
水素
CCS
洋上風力
時価総額
約4.0兆円
当期利益(25.12期)
3,938億円
自己資本比率
約61%
予想配当利回り
約3.2%

数値の基準時点:決算=2025年12月期(2026/2/12発表)/ 株価・指標=2026年6月下旬時点(株価約3,350円)。出所:INPEX IR資料(決算短信・決算説明会資料・有価証券報告書)、東京証券取引所等の開示、各証券・金融情報サイト。原油・為替で業績が大きく動くため、指標は変動します。

いそがしい人へ
  • 01INPEXは日本最大の石油・天然ガス開発会社。利益の大半は豪州のイクシスLNGで、政府が「黄金株」を持つ国内唯一の会社です。
  • 0225.12期は当期利益3,938億円。原油安で減益でも、自己資本比率61%と財務は別格に頑丈。業績は原油価格と為替で大きく振れます。
  • 03累進配当(減配しない)で配当は100→108円へ。PBR約0.8倍・利回り約3.2%の割安な高配当株と覚えればOK。
01 / そもそも何の会社?

石油とガスを「自分で掘って売る」、
日本で最大の資源開発会社。

ガソリンスタンドは石油を買って売る会社。INPEXは違います。世界中で油田・ガス田の権益(掘る権利)を持ち、自分で探鉱→開発→生産→販売まで手がけます。これを「E&P(探鉱・生産)」と呼びます。資源を輸入に頼る日本で、自前のエネルギーを確保できる数少ない会社です。

最大の特徴は、政府(経済産業大臣)が「黄金株」という特別な株を持ち、実質的な筆頭株主であること。海外勢に簡単には買収されない仕組みで、国のエネルギー安全保障を担う会社として位置づけられています。

1960s〜

海外で石油開発をスタート

インドネシアなどで石油・ガスの探鉱・生産を開始。国内では帝国石油が天然ガスを開発。「日本の資源を海外で確保する」という国家的な使命を背負って成長しました。

2005

政府が黄金株を承継

石油公団の解散にともない、経済産業大臣が株式と「黄金株(拒否権付の特別な株)」を引き継ぎ、政府が筆頭株主に。重要事項に拒否権を持つ、国内唯一の会社になりました。

2006-08

国際石油開発と帝国石油が統合

2社が合併し「国際石油開発帝石」が誕生。国内最大の石油・天然ガス開発会社に。海外権益と国内ガス供給網の両方を持つ体制へ。

2012-18

豪州イクシスLNGが始動

オーストラリアの巨大ガス田「イクシス(Ichthys)」を最終投資決定し、2018年に生産開始。海外LNG(液化天然ガス)の最大の収益柱に育ちます。

2021

商号を「INPEX」へ

社名を株式会社INPEXに変更。グローバルなエネルギー企業としてのブランドを明確にしました。

今後

脱炭素への転換も同時に

石油・ガスで稼ぎながら、水素・アンモニア・CCS(CO2回収貯留)・洋上風力へ投資を拡大。「INPEX Vision 2035」で営業キャッシュ・フロー60%拡大を目標に掲げます。

02 / どうやって稼ぐ?

地下の資源を「見つけて・掘って・売る」。
主役は豪州のLNGです。

INPEXの稼ぎ方は「上流(アップストリーム)」に集中しています。資源を生産して世界へ売る工程です。なかでも豪州のイクシスLNGが圧倒的な利益の柱。そこへ国内ガス、中東・中央アジアの油田、そして将来の脱炭素事業が加わります。

探鉱(さがす)

地下の構造を調べ、油田・ガス田を探し当てる工程。当たれば巨大な利益、外れれば費用が先行する“ハイリスク”の入口です。

開発・生産(掘って取り出す)

見つけた資源を生産設備で取り出します。一度つくれば長期間、安定してキャッシュを生む“ストック型”の収益源です。

イクシスLNG(豪州)|最大の柱

オーストラリアの巨大ガス田。天然ガスを冷やして液体(LNG)にし、日本などへ輸出します。営業利益率は85%超と桁外れに高い、会社の心臓部。

国内天然ガス

新潟など国内で天然ガスを生産し、パイプライン網で供給。エネルギー安全保障に直結する“足元”の事業です。

海外の油田・ガス田

アブダビ(中東)、カザフスタン(カシャガン・ACG)、ノルウェー(北海)など世界各地に権益。原油の生産・販売を担います。

アバディLNG(インドネシア)|次の柱

将来の大型LNGプロジェクト。最終投資決定(FID)に向けて準備中で、アジア向けの貴重な新規LNG供給源として期待されています。

低炭素ソリューション

水素・アンモニア(柏崎水素パーク)、CO2を地下に貯めるCCS、メタネーション、洋上風力(五島市沖)。脱炭素時代への“次の柱”を育成中です。

※ 業績の大半は石油・天然ガスの生産・販売で決まります。原油価格と為替(円安・円高)が利益に直結する点が、この会社を理解する最大のカギです(次のセクションで詳しく)。

03 / 事業の割合と原油サイクル

利益はイクシスに集中。
そして、原油価格の波で大きく動く。

INPEXの利益はイクシスLNGに大きく偏っています。しかも会社全体の業績は、自分では選べない原油・ガス価格為替で上下します。どこで稼ぎ、何で振られるのか。ここがこの株の肝です。

セグメント利益の構成

2025年12月期/セグメント利益・億円
イクシスLNG(豪) 67% その他E&P 33%
イクシスLNG(豪州)その他E&P(海外油田・国内ガス)低炭素・その他

イクシスLNG 1本で利益の大半。利益率は85%超と桁外れです。一方の「その他E&P」は世界中に分散しているぶん利益率は一桁台。低炭素・新規事業はまだ先行投資で赤字です。売上で見ると原油が約76%・天然ガスが約22%を占めます。

業績を動かす「3つのレバー」

INPEXの利益は、次の3つでほぼ決まります。最初の2つは自分では選べない外部要因。最後の1つだけが自助努力です。

原油・ガス価格

最大の変数
コントロール不能
ブレント原油LNG価格

価格が上がれば利益は急増、下がれば急減。2025年の原油平均は約70.69ドル(前期比で約10ドル安)。業績が世界の市況に直結する、最も大きく振れる要因です。

為替(円安)

追い風になりやすい
ドル建て収入
USD/JPY

売上の多くがドル建て。円安になると円換算の利益が膨らみます。2025年は約149.6円。油価が下がっても円安が利益を下支えする、クッション役です。

生産量・コスト

自助努力
安定の源
イクシス安定生産コスト管理

長期契約に基づくLNGの安定生産と、コスト削減・増産(Profit Booster等)。市況に左右されにくい“地力”の部分で、ここを積み上げて本源的な収益力を高めています。

過去の原油サイクル

原油の波に、業績は素直に連動してきた

2014-16

シェール革命で原油急落

原油が100ドル超から30ドル台へ暴落。2016年3月期は当期赤字に転落しました。資源価格次第で赤字にもなる、という構造をはっきり示した局面です。

2020

コロナ・ショック

世界の移動が止まり原油需要が消滅、価格は一時マイナスに。2020年12月期は大幅減益。需要側の崩壊に弱いことが露呈しました。

2022-23

ウクライナ侵攻でエネルギー高騰

供給不安で原油・ガスが急騰。過去最高水準の利益を記録しました。この潤沢な利益が、その後の増配・自社株買いの原資になりました。

2024-25

中位の油価で高水準を維持

原油は70ドル前後で推移。25.12期の当期利益は3,938億円。油価が下がっても、以前より高い利益を出せる“地力”がついてきました。

いまの立ち位置

原油60〜70ドル + 地政学リスクで上下に振れる

足元は原油が60〜70ドル台。中東情勢(ホルムズ海峡など)が緊張すると供給不安で価格が跳ね、INPEX株も反応します。一方、世界経済の減速懸念は価格の重しに。価格次第で利益が大きく動くのは変わりません。

ただし会社は累進配当(下限90円・減配しない)と自社株買いで、価格が下がっても株主還元を維持する姿勢。これが株価の下支えになっています。

出所:INPEX 2025年12月期 決算短信・決算説明会資料、有価証券報告書。セグメント利益・構成は概算で、年により変動します。過去の業績はその年の油価・為替で大きく変わります。

04 / 最新決算を読む

2025年12月期は減益。
でも“中身”は悪くない。

2026年2月12日発表の通期決算(2025年1月〜12月/INPEXは12月決算)は、原油安で減収減益でした。とはいえ、下がった理由の中心は外部要因です。まずは事実としての数字を押さえましょう。

売上収益
2.01兆円
−11.2% 前期比
当期利益(株主帰属)
3,938億円
−7.8% 前期比
営業利益
約1.1兆円
高採算は維持

当期利益の推移と来期予想

単位:億円 / 親会社の所有者に帰属する当期利益
0 1,250 2,500 3,750 5,000 3,260 2023 4,271 2024 3,938 2025 3,300 2026 会社予想
実績会社予想(26.12期)

利益は原油価格の波で上下します。2022年はエネルギー高騰で過去最高水準(約4,400億円)、2020年はコロナで大きく落ち込みました。足元は油価70ドル前後で3,900〜4,300億円台の高水準を維持しています。

減益の中身を読む

下がった主因は「油価」。実力は落ちていない

減益の最大の理由は、原油の平均販売価格が前年より約10ドル下がった(70.69ドル)こと。事業がうまくいかなかったのではなく、市況が下がったのが主因です。

むしろ会社は、期初の予想3,300億円を大きく上回る3,938億円で着地。コスト改善や豪州の税負担減などで1,000億円近く上積みしました。

ポジティブ材料

条件をそろえれば“実質・過去最高”

会社の説明では、油価を約68ドル・為替を約149円という2025年の前提でそろえて比べると、過去の決算で最も良い数字。本源的な稼ぐ力は着実に上がっています。

採算も高く、第4四半期の売上営業利益率は53.5%。少ない売上から厚く利益を取れる、資源会社らしい収益構造です。

出所:INPEX 2025年12月期 決算短信・決算説明会資料(2026/2/12)、各社報道。過年度の利益はその年の油価・為替で大きく変動します。

05 / 来期はどうなる?

会社予想は減益の3,300億円。
ただし「油価安・控えめ前提」です。

会社自身が示す2026年12月期の見通しです。会社予想は「達成を約束する数字」ではなく「いまの計画値」。INPEXは毎年やや控えめ(保守的)な油価前提を置く傾向があり、上振れすることが多い点も押さえておきましょう。

26.12期 会社予想 当期利益
3,300 億円
−638億円(前期比) / 油価安前提の保守的計画
それでも1株配は100円→108円へ増配予定

予想を読むうえでの3つの注記

① 前提はブレント原油63ドル・為替151円。2025年実績(約68ドル)より低い油価を置いており、油価が想定より高ければ上振れします。

② 主力イクシスのセグメント利益は2,708億→約2,200億を見込みます。減益でも会社は減配せず増配する方針を示しました(累進配当)。

③ 実際、2026年5月には通期予想を上方修正し増配を発表。第1四半期は減益でしたが、計画が控えめだったことが裏づけられました。中計では8,500億円の成長投資も計画しています。

06 / 株価と「割安・割高」の指標

株価は原油で乱高下。
いまは「純資産割れ」近辺です。

INPEXの株価は、原油価格と中東情勢で大きく上下します。2026年は春に4,000円台後半まで上げた後、油価の軟化で下落。足元は3,300円台です。下のチャートは主要な節目をつないだ値動きです。

株価の推移(2026年)

終値ベースの主要な節目/単位:円
3,200 3,600 4,000 4,400 3,677 2/20 4,118 5/01 3,500 6/19 3,287 6/25 3,351 6/26
株価直近の反発(6/26・中東情勢)
直近の株価(6月下旬)
約3,350
原油・地政学で変動
予想配当利回り
約3.2%
配当108円 ÷ 株価
PBR(株価純資産倍率)
約0.8
1倍割れ

この株は割安?割高? — 主要指標をやさしく

「株価が高い/安い」は株価の数字だけでは決まりません。利益や純資産と比べて初めて判断できます。代表的なものさしを、意味とあわせて並べます(株価約3,350円で計算した概算)。

EPS1株あたり利益
約360 約300

1株が1年で生む利益。25.12期 約360円→26.12期予 約300円(油価安前提で減少)。

BPS1株あたり純資産
約4,300

1株あたりの会社の純資産。株価がこれを下回ると「純資産割れ(PBR1倍未満)」。

PER株価収益率(予)
約11

株価がEPSの何倍か=利益の何年分。資源株としては標準的〜やや低めの水準。

PBR株価純資産倍率
約0.8

株価がBPSの何倍か。1倍未満=会社の純資産より株価が安い状態。資源株にありがち。

ROE自己資本利益率
約8% 約7%

株主のお金をどれだけ効率よく増やしたか。自己資本が厚いぶん数値は控えめ。

ROA総資産利益率
約4%

資産全体をどれだけ効率よく使い利益を生んだか。重い設備を持つ業種としては良好。

配当利回り予想
約3.2%

株価に対し年間配当が何%か。108円への増配+株価下落で、利回りは上昇。

自己資本比率財務の強さ
約61%

総資産の6割が自前資本。借金が少なく財務は非常に健全。ここが大きな強み。

いちばんの注目点

なぜ、いつも「割安」に見えるのか

INPEXのPBRは長年1倍前後〜それ以下で推移してきました(過去の範囲はおよそ0.2〜1.4倍)。理由は、①利益が油価次第で読みにくい「資源株ディスカウント」、②脱炭素という長期の逆風。一方、厚い自己資本と手厚い還元が下支えとなり、極端には下がりにくい構造です。下のバーは過去の振れ幅と現在地のイメージです。

1.0倍
現在 約0.8倍
過去レンジ 0.2〜1.4倍

出所:IRBANK・各金融情報サイト、INPEX IR資料(指標は2026年6月時点、株価15〜20分遅延)。EPS/BPS/PERは株価や集計元・会計基準により表記が異なります。1株あたりの数値は概算です。

07 / 指標を他社・市場と比べる

市場より「割安」、財務は「別格に頑丈」。

指標は単体では意味を持ちません。石油・資源の同業市場全体(東証プライム)という2つの“ものさし”に当てると、INPEXの位置が見えてきます。

指標くらべ(自社/同業/市場)

バーの長さは水準のイメージ
PBR株価純資産倍率(低いほど割安)
INPEX
約0.8倍
石油・資源同業
約0.8倍
市場平均
約1.4倍
PER(予)株価収益率(低いほど割安)
INPEX
約11倍
石油・資源同業
約10倍
市場平均
約16倍
配当利回り予想(高いほど配当が厚い)
INPEX
約3.2%
石油・資源同業
約3.8%
市場平均
約2.2%
自己資本比率財務の安定性(高いほど頑丈)
INPEX
約61%
石油・資源同業
約40〜50%
市場平均
約40%

※ 石油・資源同業=ENEOS・出光興産・石油資源開発(JAPEX)等の目安。市場平均=東証プライムの概算。集計元・時点で変動します。

読み解き① 市場よりは「割安」

PBRは1倍割れ、PERも市場平均(約16倍)より低い約11倍。これは資源株に共通する“ディスカウント”で、INPEXに限った話ではありません。利益が油価次第で読みにくいことと、脱炭素という長期不安が映っています。

裏を返せば、油価が想定より高く推移すれば、割安が修正される余地があります。

読み解き② 財務の頑丈さは「別格」

最大の違いは自己資本比率61%。借金が少なく、現金も厚い“無借金体質に近い”会社です。これは油価が暴落しても倒れにくく、配当を続けやすいことを意味します。

資源株は浮き沈みが激しいぶん、この財務の余裕が安心材料。日本唯一の国産E&Pという希少性も、他社にはない特徴です。

08 / 市場・アナリストの評価

プロは「買い」寄り。個人は真っ二つ。

証券アナリストのコンセンサスは「買い」ですが、中立も多め。一方で個人投資家の見方は強気と弱気にくっきり割れているのがINPEXの特徴です。両者を並べます。

アナリスト判断(レーティング)

コンセンサスは「買い」。★★★★☆(やや強気)だが中立も多い。

強気・買い
6
中立
5
弱気・売り
1

※ 集計の一例で「買い6:中立5:売り1」程度(みんかぶ/投資情報サイト、2026年6月時点)。買い優勢だが、中立も無視できない構成です。

目標株価(1年後予想)

下限
2,880
平均(コンセンサス)
約4,050
上限
4,950

平均目標株価はおよそ4,000〜4,100円で、直近株価(約3,350円)より15〜20%上。ただしレンジは2,880〜4,950円と広く、油価次第で見方が大きく割れていることが読み取れます。

個人投資家の温度感

「強く買い」44% <>「強く売り」28%

掲示板の感情投票では「強く買いたい」が約44%と最多の一方、「強く売りたい」も約28%。高配当・割安に魅力を感じる層と、脱炭素・油価下落を警戒する層が真っ向から対立しています。意見が割れる=この株の評価が一筋縄でいかないことの表れです。

出所:みんかぶ・investing.com等のアナリスト集計、Yahoo!ファイナンスの感情投票(2026年6月時点)。目標株価・判断は各社・時点で異なります。

09 / 投資信託での採用状況

知らないうちに、もう持っているかも。

INPEXは日経平均・TOPIXなど主要指数の構成銘柄なので、インデックス投信を通じて多くの人が間接的に保有しています。さらに高配当・バリュー系のアクティブ投信でも定番候補。「採用される理由」を見ると、市場の評価軸が分かります。

主要指数すべて採用
INPEXは日経平均株価(225)・TOPIX・JPX日経400の主要3指数すべてに採用。これらに連動する多数のインデックス投信・ETFが自動的に保有するため、個人が知らないうちに間接保有しているケースが非常に多い銘柄です。

パッシブインデックス投信・ETF

指数に採用 → 連動ファンドが自動的に保有

  • 日経平均株価(225)日経225連動型のETF・投信(例:NF・日経225 ETF など)が保有。
  • TOPIX(東証株価指数)TOPIX連動型(例:上場TOPIX、NF・TOPIX ETF など)。日本株インデックスの王道。
  • JPX日経インデックス400ROE・営業利益・ガバナンス等で選ぶ“質”の指数。連動型(例:上場JPX日経400)が保有。

エネルギー安全保障の中核として、また国の黄金株が入る特別な会社として、日本の代表的な大型株に位置づけられます。指数に入っている限り、相場全体に資金が向かえばINPEXにも自動的に買いが入る構造です。

アクティブ運用者が選ぶファンド

高配当・バリュー・資源/エネルギーを狙う投信の定番候補

  • 高配当株ファンド予想配当利回りが市場平均より高く、累進配当(減配しない方針)で大型・高流動性。各種「高配当株/好配当株」投信の定番候補。
  • バリュー(割安)株ファンドPBR1倍割れ・低PERの代表格。割安が修正される“伸びしろ”を狙う投信に組み入れられやすい。
  • 資源・エネルギー/インフレ対応系原油高・インフレ局面で強い「資源株」として。物価上昇への備えやポートフォリオ分散の目的で選ばれる。

なぜ、これだけ多くのファンドに選ばれるのか

① 主要3指数すべてに採用 → パッシブ資金が自動流入② 高配当+累進配当 → 高配当ファンドの定番③ 割安(低PER・PBR1倍割れ) → バリューファンド④ 資源・インフレ対応 → エネルギーテーマ⑤ 大型・高流動性 → 大きく持てる

※ 具体的にどのファンドがどれだけ保有するかは、各ファンドの月次レポート(組入上位銘柄)で変動します。ここでは「採用されやすい理由」を整理しています。

出所:各指数の構成銘柄、運用会社の交付目論見書・マンスリーレポート、投信情報サイト等。

10 / 投資家からの評判

国内では「国策の高配当株」。
株主の筆頭は、なんと政府です。

INPEXの株主構成は、ほかの会社と決定的に違います。筆頭株主が経済産業大臣(政府)で、さらに拒否権付きの「黄金株」も政府が握っています。個人投資家と海外勢、それぞれの見方を並べます。

国内の個人投資家

「割安・高配当・国策の安心感」
  • 高配当(利回り約3%)+累進配当で「減配しない」安心感。長期保有の高配当株として人気。
  • QUOカードの株主優待(400株以上)も個人に好まれる。政府が支える“国策株”という安心感も。
  • 業績が原油価格次第で読みにくい。減益見通しや脱炭素の逆風が出ると、まとまった売りも出やすい。
  • ±掲示板では強気と弱気が真っ二つ(前セクション参照)。「割安」と見るか「万年割安」と見るかで評価が分かれる。

政府・海外の機関投資家

「資源資産だが、外資の支配は不可」
  • 政府(経済産業大臣)が筆頭株主で約23%を保有(2025年6月末)。エネルギー安全保障のため、国が安定株主として支える構図。
  • 海外機関は割安な資源資産・高い財務健全性を評価して一定保有。原油高・インフレ局面の分散先としての需要も。
  • 黄金株で外資の影響力は制限。大量取得や重要事項に政府が拒否権を持つため、買収・アクティビスト的な圧力は効きにくい。
  • ±脱炭素を重視するESG系の資金からは敬遠されることも。長期の化石燃料リスクが意識される。

株主の内訳(概算)

政府 23%
外国人 約30%
国内機関 約25%
個人 約22%
政府(経済産業大臣)約23%+黄金株外国法人等 約30%国内金融機関・信託 約25%個人・その他 約22%

大株主(筆頭)

  • 経済産業大臣(政府)23.11%
  • + 甲種類株式(黄金株・拒否権付)政府保有
  • 以下:信託口(日本マスタートラスト等)・海外機関 等

政府が約23%(2025年6月末)の筆頭株主。普通株に加え「黄金株」も握るのがINPEX最大の特徴です。比率は概算で、信託口は多くの投資家の“預かり口”です。

財務と還元の素顔

会社開示の数字で見る「頑丈な財務」と「手厚い還元」。

  • 自己資本比率約61%
  • ROE(自己資本利益率)実績/予想約8% / 約7%
  • 2025年度 総還元性向約55%
  • 年間配当100円 → 108円
  • 自己株取得(2025年度)約1,000億円

自己資本比率61%と借金が少なく、現金も厚い“頑丈な財務”。利益の半分以上を配当+自社株買いで還元しています。資源株は浮き沈みが激しいぶん、この財務の余裕と手厚い還元が安心材料になっています。

出所:INPEX 有価証券報告書・IR資料(大株主・株式の状況)、IRBANK等。経済産業大臣の保有比率(23.11%)は2025年6月末基準。その他の内訳は概算です。

11 / 黄金株とエネルギー安全保障

政府が「拒否権」を握る、
日本で唯一の会社。

INPEXを理解するうえで避けて通れないのが黄金株(おうごんかぶ)。政府が経営の重要事項に“拒否権”を持つ特別な株で、これを発行しているのは日本でINPEXただ1社です。仕組みと、良い面・悪い面を整理します。

黄金株(甲種類株式)とは——1株でも、特定の重要事項に対して「ノー」と言える拒否権を持つ特別な株。INPEXでは経済産業大臣がこれを保有し、外国資本による大量取得、重要資産の処分、解散などに歯止めをかけられます。

なぜ必要か。INPEXは日本のエネルギー安全保障の要だからです。エネルギーを輸入に頼る日本にとって、自前で石油・ガスを確保するこの会社が外国に支配されては困る。だから政府が普通株(約23%)に加えて黄金株でも“安全装置”をかけているのです。

メリット国に守られる強み

  • エネルギー安全保障の後ろ盾:国策会社として、長期の大型開発を国とともに進められる。
  • 安定株主の存在:政府が約23%を保有する筆頭株主。短期の株主圧力に振り回されにくい。
  • 買収・乗っ取りに強い:黄金株で外資の支配を防げる。腰を据えた長期投資がしやすい。
  • 希少性:日本唯一の本格的な国産E&P。代わりのきかない存在として位置づけられる。

デメリット“割安”の理由にも

  • 経営の自由度が制約:重要事項に政府の同意(甲種類株主総会)が要る。機動的な再編がしにくい。
  • 市場の規律が効きにくい:アクティビストや買収による“揺さぶり”が効かず、変革圧力がかかりにくい。
  • 国策と株主利益の綱引き:エネルギー安定供給が優先され、株主還元が後回しになる場面も。
  • ディスカウント要因:この“動かしにくさ”が、PBR1倍割れの一因とも言われる。
いまの位置づけ

脱炭素時代でも、国が支える前提は変わらない

第7次エネルギー基本計画でも、エネルギーの安定供給(Energy Security)は国の大前提とされ、石油・天然ガスの自主開発比率を高める方針が再確認されています。INPEXは脱炭素(水素・CCS・洋上風力)にも国とともに取り組むことで、エネルギー転換後も国策の中核であり続けようとしています。黄金株は、その“国とINPEXの関係”を象徴する仕組みです。

12 / マクロ環境との接点

原油・地政学・脱炭素・円安。
大きな潮流は、INPEXにどう効くか。

資源会社だからこそ、世界の大きなテーマが業績に直結します。INPEXに効く主要な追い風・逆風を、4つの切り口で整理します。

原油・ガス価格

最大の変数

業績を最も大きく動かす要因。1ドルの油価変動が利益を数十億円単位で動かします。足元は60〜70ドルの中位水準で、過去より高い利益を出せる体質になっています。

OPEC+の減産方針、世界経済の強弱、米シェールの増産などで日々変動。価格が上がれば一気に増益に振れる“レバレッジ”が働きます。

地政学(中東)

両面(主に追い風)

中東情勢(ホルムズ海峡など)が緊張すると供給不安で原油が急騰し、INPEX株はしばしば上昇します。2026年6月の海峡での緊張時も株価が反発しました。

ただし、紛争が世界経済の減速につながれば需要が冷え、価格を押し下げる面も。地政学は諸刃の剣です。

脱炭素・エネルギー転換

長期の逆風

世界が化石燃料への依存を減らす流れは、長期では需要面の重し。ESG重視の資金から敬遠される一因にもなっています。

一方、LNG(天然ガス)は「移行期の燃料」として当面需要が続く見込み。INPEXが水素・CCS・洋上風力に投資するのは、この逆風に備える動きです。

円安・AI電力需要

追い風

売上の多くがドル建てのため、円安は円換算の利益を押し上げます。日銀が金利を上げても、円安が続けば下支えに。

さらにAI・データセンターの普及で世界の電力需要が急増。発電燃料としてのLNG・天然ガス需要を中長期で支える要因になります。

出所:各種報道・INPEXサステナビリティ資料・エネルギー基本計画等(2026年6月時点)。マクロの影響は不確実性が高く、ここでの整理は方向感を示すものです。

13 / 5年・10年・20年の立ち位置

「石油・ガスで稼ぐ会社」から
「総合エネルギー会社」へ。

INPEXが描く長期の方向性と、その先の構造シナリオです。5年・10年は会社の公表目標20年は公表目標のない構造的な見立てとして、区別して読んでください。

いま / 2026
資源で稼ぐ会社
現在地
実績
  • 当期利益3,938億円(25.12期)
  • PBR約0.8倍・配当利回り約3.2%
  • 業績は原油価格に大きく依存
〜5年 / 2027
還元と成長の両立
中期経営計画 2025-27
会社目標
  • 総還元性向50%以上(累進配当+自社株買い)
  • 8,500億円の成長投資を計画
  • アバディLNGのFID(投資決定)判断へ
  • 低炭素事業の実証を順次開始
〜10年 / 2035
第2の柱を育てる
INPEX Vision 2035
会社ビジョン
  • 長期目標営業キャッシュ・フロー60%拡大
  • 水素・アンモニア・CCS・洋上風力を「第2・第3の成長軸」に育成
  • 石油・ガスで稼ぎつつ脱炭素へ移行
〜20年 / 2045
エネルギー転換の分岐点
構造シナリオ(推定)
見立て
  • 化石燃料の需要がどこまで残るかが最大の不確実性
  • CCS・水素で「脱炭素時代のエネルギー会社」に転身できるか
  • 国のエネルギー安全保障の中核という立場は続く可能性が高い
  • リスク:脱炭素が急速に進めば既存資産が“座礁”する恐れ

10年後までは会社が掲げる方向性に沿っていますが、達成は原油価格や技術次第で保証されません。20年後は不確実性がさらに大きく、ここでの記述は一つのシナリオです。長期見通しほど幅をもって捉えるのが安全です。

14 / 配当・株主還元

「減配しない」累進配当+自社株買い。

INPEXの還元方針はシンプルで強力です。累進配当——つまり業績が悪化しても配当を下げず、増やすか維持するという約束を掲げています。資源株にしては配当が読みやすいのが魅力です。

26.12期 予想配当
108
前期100円から増配
累進配当の下限
90
これを下回らない方針
予想配当利回り
約3.2%
株価約3,350円で計算

配当方針は累進配当(1株年90円を下限とし、減配しない)。減益見通しの2026年度も、配当はむしろ100円→108円へ増配する予定です。利益が原油で揺れても配当は下支えされる——ここが高配当株として支持される理由です。

配当に加えて自社株買いも実施。2025年度は年間配当(100円)に約1,000億円の自己株取得を組み合わせ、総還元性向は約55%に。中期経営計画(2025-2027年)でも総還元性向50%以上を掲げています。

さらに株主優待(QUOカード)も。2019年導入で、毎年6月末・12月末時点で400株以上を一定回数以上継続保有する株主が対象。長期保有を促す内容です。

出所:INPEX 配当方針・2025年12月期 決算短信・決算説明会資料(2026/2/12)、IR資料。配当利回りは株価により変動します。

15 / リスクと注意点

高配当の裏で、見ておくべき4つの論点。

財務は頑丈で配当も手厚い一方、資源会社ならではの不安定さがあります。良い面だけでなく、ここを併せて見るのが大切です。

01

原油・ガス価格と為替の変動(業績直結)

最大のリスク。利益は油価と為替でほぼ決まり、自分でコントロールできません。2016年3月期には原油急落で当期赤字に転落した実績も。価格が下がれば利益も配当余力も縮みます。

02

脱炭素という長期の逆風

世界が化石燃料を減らす流れが続けば、中長期で需要・価格の重しに。最悪の場合、開発済みの油ガス田が使えなくなる「座礁資産」のリスクも。水素・CCSへの転換が間に合うかが問われます。

03

地政学・大型プロジェクトのリスク

権益は中東・カザフ・豪州・インドネシアなど世界各地。紛争・制裁・資源国の政策変更で操業が左右されます。アバディLNG等の大型開発は、遅延・コスト超過や探鉱費の先行負担も起こり得ます。

04

黄金株による経営自由度の制約

政府が拒否権を持つため、機動的な再編や大胆な株主還元がしにくい面も。市場の規律(買収・アクティビズム)が効きにくく、これがPBR1倍割れの一因とも言われます。

これらの多くは資源株・国策株に共通する論点です。「高配当・割安・頑丈な財務」という魅力と、「油価次第・脱炭素・動かしにくさ」という弱点をセットで見る姿勢が、この会社を理解する近道です。

/ 3行でまとめると

このページの要点。

正体:INPEXは日本最大の石油・天然ガス開発会社(E&P)。世界各地で資源を掘って売り、利益の大半は豪州のイクシスLNG。政府が黄金株を持つ国内唯一の会社で、エネルギー安全保障の要。

決算:25.12期は当期利益3,938億円(原油安で減益だが、条件をそろえれば実質過去最高水準)。26.12期予は油価安・控えめ前提の3,300億円で、上振れしやすい計画。

指標:PER約11倍・PBR約0.8倍と割安で、自己資本比率約61%と財務は別格に頑丈。ただし業績は原油価格と為替で大きく振れる。割安は資源株共通のディスカウント。

還元:累進配当(下限90円・減配しない)で配当は100→108円へ増配。総還元性向50%以上+QUOカード優待。減益局面でも還元を維持する姿勢が高配当株として支持される。

評価・未来:アナリストは買い寄り(平均目標約4,050円)だが個人は賛否が真っ二つ。脱炭素が長期の逆風で、水素・CCS・洋上風力へ転換中。原油高か脱炭素加速か、で評価が分かれる。