一覧 ホンダ入門 7267 / 東証P
総合解説・ゼロから読む

二輪で世界一。
でも四輪は、上場来初の赤字。
ホンダとは何者か。

ホンダ(証券コード 7267)は、オートバイで世界一のメーカー。年に約2,200万台を売る二輪が利益の柱で、四輪(クルマ)・金融・パワープロダクツまで手がけます。ところが2026年はEV戦略の見直しで約1.5兆円の損失を計上し、四輪が沈んで上場来初の赤字に転落しました。それでも二輪と金融は絶好調で、株価はPBR約0.5倍、配当利回りは約4.8%と割安・高配当のまま。なぜ「世界一」の会社が赤字で、なぜこんなに安いのか——順番にほどいていきます。

二輪(世界一)
四輪(クルマ)
ハイブリッド(HV)
EV・電動化
金融サービス
パワープロダクツ
HondaJet・航空
ロボ・パワーユニット
モータースポーツ
売上収益(26.3期)
21.8兆円
営業損益(26.3期)
△4,143億円
二輪 営業利益(世界一)
7,319億円
予想配当利回り
約4.8%

数値の基準時点:決算=2026年3月期(2026/5/14発表・IFRS)/ 株価・指標=2026年6月下旬時点の概算(株価約1,450円)。出所:本田技研工業 決算短信〔IFRS〕・決算説明会資料・IR資料、IRBANK、各証券・金融情報サイト。数値は変動するため最新の一次情報をご確認ください。

いそがしい人へ
  • 01ホンダは二輪(オートバイ)で世界一。年約2,200万台を売る二輪が利益の柱で、四輪・金融・パワープロダクツも持つ"バイクも作る自動車メーカー"です。
  • 0226.3期はEV関連で約1.5兆円の損失を一括計上して四輪が赤字転落。上場来初の営業赤字(△4,143億円)・最終赤字(△4,239億円)に。ただし二輪は過去最高益(7,319億円)で、損失は一過性です。
  • 03それでも株価はPBR約0.5倍と大きく1倍割れ、利回り約4.8%+大型自社株買いで還元は厚い。「二輪世界一なのに、四輪のEV損失で安く沈む割安・高配当株」と覚えればOK。
01 / そもそも何の会社?

町工場から生まれた、
「世界一のバイク屋さん」。

ホンダのはじまりは、本田宗一郎が立ち上げた小さな町工場でした。自転車に補助エンジンを付けるところから始まり、約75年でオートバイの世界一、そしてクルマの世界的メーカーに。いまも“クルマの会社”であると同時に、世界でいちばんバイクを売る会社そのものです。

覚えておくと早いのは、ホンダが「エンジンの会社」だということ。バイク・クルマ・発電機・船外機、さらには飛行機(HondaJet)まで——動かす心臓をつくる技術が、すべての事業の土台です。

1948

本田技研工業 設立

本田宗一郎が静岡で創業。自転車用補助エンジンから出発し、すぐにオートバイの製造へ進みました。

1959

アメリカ進出

米国にアメリカン・ホンダを設立。「ナイスな人はホンダに乗る」の広告で、小型バイクを米国に根づかせました。二輪はやがて世界一に。

1963〜

四輪(クルマ)へ参入

軽トラックとスポーツカーで自動車に進出。1972年のシビック(CVCC)は、当時最も厳しい米マスキー法を世界で初めてクリアし、世界的ヒットになりました。

1986

アキュラで高級車市場へ

米国向け高級ブランドアキュラ(Acura)を投入。北米はいまもホンダ四輪の最大の稼ぎ場です。

2015

IFRS適用・航空機へ

会計基準をIFRSに移行。同年、小型ビジネスジェットHondaJetを米国で納入開始し、空にも進出しました。

2024〜26

株式分割・日産統合の破談・赤字

2024年に1株を3株に分割。日産との経営統合協議は2025年に破談。2026年3月期はEV戦略の見直しで上場来初の赤字となり、HV回帰と四輪再構築へ舵を切りました。

02 / どうやって稼ぐ?

主役は四輪。でも、利益を稼ぐのは二輪。

ホンダの決算は大きく「二輪」「四輪」「金融サービス」「パワープロダクツ」の4つに分かれます。売上がいちばん大きいのは四輪ですが、いま利益を稼いでいるのは二輪と金融——ここがトヨタとの決定的な違いです。

二輪事業(世界一)

オートバイ・原付。世界販売は年約2,200万台で不動の世界一。インド・東南アジア・ブラジルなど新興国で圧倒的に強く、26.3期は営業利益7,319億円と過去最高。利益の柱です。

四輪事業(クルマ)

世界販売は年約340万台で売上は最大。北米が主力です。半面、26.3期はEV関連損失で大幅な赤字に。為替・関税・電動化の逆風をもろに受ける部門です。

金融サービス事業

バイクやクルマのローン・リース。販売を後押ししながら、毎期積み上がる安定収益を生みます。26.3期も営業利益2,755億円と、二輪に次ぐ稼ぎ手でした。

パワープロダクツ・その他

発電機・芝刈り機・船外機などの汎用エンジンと、HondaJet・ロボティクスなど新領域。規模は小さく、収益は年により赤字も。将来の種まきの場です。

※ セグメント名や区分は会社の開示に基づく整理です。金額・分類は決算期により変わることがあります。

03 / 事業の割合と性格

どこで稼ぎ、どこが沈んだか。

営業利益の構成を見ると、ホンダの「いびつな構造」が浮かびます。本来の主役である四輪がEV損失で赤字に沈み、二輪と金融が会社を丸ごと支えたのが26.3期でした。利益の柱・安定・再建中の3つに束ねて整理します。

セグメント別の営業利益

2026年3月期/セグメント営業利益・億円(四輪はEV関連損失を除く調整後)
二輪事業 70% 金融サービス事業 26% 四輪事業(調整後) 4%
利益の柱(二輪=世界一)安定収益(金融サービス)再建中(四輪・EV損失で赤字)

※ あくまで概算イメージです。二輪が利益の約7割を占める柱で、金融が続きます。四輪は本来の主役ですが、EV関連損失(約1兆4,536億円)で営業損益は△約1.41兆円の赤字。ここではEV損失を除いた調整後(約430億円)で表示しました。パワープロダクツ等は△107億円の小幅赤字です。

3つの役割で読み解く

同じ「事業」でも、景気や政策への強さが違います。3分類で見ると、ホンダの利益が「強い二輪」と「それを支える金融」、そして「立て直し中の四輪」でできていることが見えてきます。

利益の柱

世界一
稼ぎ頭は二輪
バイク新興国で圧倒的年2,200万台

売上は四輪に次ぐが、利益では断トツの柱。インド・東南アジアなど成長市場で台数を伸ばし、26.3期は過去最高益。為替や関税の影響も四輪より小さく、安定して稼ぎます。

安定

ディフェンシブ
販売を支える金融
ローンリース

バイク・クルマの販売金融。毎期積み上がるストック型の収益で、本業の振れをやわらげるクッション。26.3期も二輪に次ぐ利益を出しました。

再建中

シクリカル
立て直す四輪
北米中心HV回帰EV見直し

売上は最大でも、EV損失と米関税で赤字。EVへの巨額投資を一度損切りし、当面はHV(ハイブリッド)を軸に据え直して収益を立て直す段階です。

いまの立ち位置

二輪は強い。でも、四輪をどう立て直すか

二輪の世界一という独自の屋台骨があるのがホンダの強み。トヨタにはない、景気や関税に振られにくい稼ぎ頭です。

課題は四輪。EVに先行投資しすぎた反省からHVへ回帰し、北米の現地生産で関税をかわしながら、四輪の採算を立て直せるかが当面の宿題です。

出所:本田技研工業 2026年3月期 決算短信〔IFRS〕・決算説明会資料(2026/5/14)、IRBANK、各社報道。構成比は営業利益の概算で、区分・金額は変動します。

04 / 最新決算を読む

上場来初の赤字。
でも、中身は「EVの損切り」。

2026年5月14日発表の通期決算(2026年3月期)です。売上は過去最高水準ですが、EV戦略の見直しで巨額の損失を一括計上し、上場来初の赤字に転落しました。良いところと、気になるところを分けて見ます。

売上収益(売上)
21.8兆円
+0.5% 前期比(過去最高水準)
営業損益
△4,143億円
上場来初の営業赤字
当期損益(親会社帰属)
△4,239億円
上場来初の最終赤字

営業利益の推移と来期予想

単位:億円 / 26.3・27.3期はEV関連損失を除く調整後
0 3,750 7,500 11,250 15,000 7,807 23.3 13,819 24.3 12,134 25.3 10,393 26.3 10,000 27.3 会社予想
実績(調整後)会社予想(27.3期)

EV関連損失を除いた調整後の営業利益は1兆393億円で、本業の稼ぐ力は健在。一方、これにEV関連損失(約1兆4,536億円)を反映した実際の営業損益は△4,143億円の赤字でした。「最高益級の本業」と「一過性の大損失」が同居した決算です。

良いところ

二輪が過去最高益、本業は黒字

二輪は販売2,210万台・営業利益7,319億円とともに過去最高。金融も2,755億円と堅調で、EV損失を除けば営業利益1兆円超。コア事業はしっかり稼いでいます。

赤字は資産の評価損などが中心で、現金が出ていく損失ばかりではありません。

気になるところ

四輪がEV損失で△1.4兆円の赤字

EV市場の急減速で、工場やソフト開発などに約1兆4,536億円のEV関連損失を計上。四輪事業は△約1.41兆円の営業赤字に沈みました。

米関税の逆風も重なり、本来の主役である四輪の採算の弱さが表に出た決算です。EVへの読み違いというツケでもあります。

出所:本田技研工業 2026年3月期 決算短信〔IFRS〕・決算説明会資料(2026/5/14)、各社報道。金額は概算を含みます。EV関連損失は集計範囲により約1.45〜1.58兆円と幅があります。

05 / 来期はどうなる?

会社予想は、黒字回復。

会社が示す2027年3月期の見通しです。会社予想は「約束」ではなく「いまの計画値」ですが、EV損切りを終えて黒字に戻す、という経営の温度感が読めます。

会社予想 純利益(親会社帰属)
2,600 億円
27.3期予(赤字→黒字へ)
23.2 兆円
売上収益予(+6.2%)
営業利益は5,000億円へ回復 / 1株配は70円を維持予想

予想を読むうえでの3つの注記

① 黒字回復の前提はEV損失の一巡。大きな評価損は出し切ったとの想定で、四輪はHV回帰を軸に立て直します。

米関税の影響は引き続き重し。北米の現地生産でかわす方針ですが、通商政策次第で上下に振れます。為替の前提も収益を左右します。

③ それでも配当は70円を維持し、大型の自社株買いも継続する方針。赤字の年でも還元を止めなかった姿勢の延長です。

06 / 株価と「割安・割高」の指標

1株1,400円台。決算の赤字で沈み、
その後は反発。

2026年の株価は、2月の高値1,722円から、決算直前の5月に1,238円まで下げました。赤字決算が嫌われた形ですが、「EVの損切り」と受け止められて発表後は反発しています。指標もやさしく整理します。

株価の推移(2026年)

終値ベースの主要な節目(概算)/単位:円
1,200 1,340 1,480 1,620 1,760 1,560 1/6 1,722 2/9 1,310 4/30 1,238 5/11 1,349 5/14 1,450 6/26
株価決算発表(5/14)
直近の株価(6月下旬)
1,450円 前後
決算後に反発
年初来高値
1,722
2026/2/9
年初来安値
1,238
2026/5/11(決算直前)

この株は割安?割高? — 主要指標をやさしく

数字は「市場平均(東証プライムの概算)」と比べると意味が分かります。ホンダはPBR・利回りで見れば割安・高配当。一方で赤字明けのPERは高く見える——この二面性が読みどころです。

EPS1株あたり利益
△106 約67

1株が1年で生む利益。26.3期は赤字で△106円、27.3期は黒字回復で約67円の予想。

BPS1株あたり純資産
約3,036

1株あたりの純資産。株価(約1,450円)はこれの半分以下=PBR1倍を大きく割れた状態。

PER株価収益率(予)
約21

利益の何年分か。赤字明けで利益が一時的に低いため高く見える。黒字が正常化すれば1桁台。市場平均は約15倍。

PBR株価純資産倍率
約0.5

純資産の何倍か。1倍未満は「純資産割れ」。市場平均(約1.4倍)の半分以下で、自動車株の中でも割安。

ROE自己資本利益率
約△3.5%

株主のお金をどれだけ増やしたか。赤字でマイナス。前期は約6.8%、黒字回復で再びプラスへ。

配当利回り予想
約4.8%

株価に対する年間配当の割合。市場平均(約2%台)の倍以上で、自動車株でも高い高配当。

自己資本比率
約35.3%

総資産のうち自前資本の割合。販売金融を抱えるため低めに見えるが、製造業として健全な水準。

時価総額会社の値段
約6.6兆円

トヨタ(約43兆円)の約6分の1。四輪では中堅だが、二輪では世界一の存在です。

注目点

世界一のバイク屋が、PBR0.5倍

ホンダのPBRはおおむね0.4〜0.8倍で推移してきましたが、いまは約0.5倍。「会社を解散して資産を分けたほうが、株価より価値がある」と市場が見ている状態で、トヨタ(約0.9倍)よりさらに低い水準です。四輪の採算とEV戦略への不安が、二輪世界一という強みを覆い隠している格好です。

1.0倍
現在 約0.5倍
おおむね0.4〜0.8倍で推移

出所:IRBANK・各金融情報サイト(指標は2026年6月時点の概算、株価は遅延あり)。EPS/ROE/PER等は集計元により表記が異なる場合があります。PERは赤字明けの会社予想ベースで高めに出ます。

07 / 指標を他社・市場と比べる

自動車株はそろって割安。
その中でも、ホンダはとくに安い。

ライバルはトヨタや日産。自動車株は世界的にPBRが低く見られがちで、ホンダはその中でもとりわけ割安・高配当です。ただし規模ではトヨタに遠く及ばず、足元は赤字という弱さもあります。

指標くらべ(自社/同業/市場)

バーの長さは水準のイメージ
PBR株価純資産倍率(低いほど割安)
ホンダ
約0.5倍
自動車他社
約0.9倍
市場平均
約1.4倍
配当利回り予想(高いほど配当が厚い)
ホンダ
約4.8%
自動車他社
約3.6%
市場平均
約2.2%
PER(予)株価収益率(赤字明けで高め)
ホンダ
約21倍
自動車他社
約12倍
市場平均
約15倍
ROE自己資本利益率(高いほど効率的)
ホンダ
△3.5%(赤字)
自動車他社
約9%
市場平均
約9%

※ 自動車他社=トヨタ・日産等の目安。市場平均=東証プライムの概算。集計元・時点で変動します。PERは赤字明けで利益が一時的に低いため高く見える点に注意。

自動車大手を並べる(概算・市場データ)

規模はトヨタが断トツ。ホンダは中堅で、いまは赤字。ただしPBRの割安さと配当利回りの高さは際立ちます。

会社(コード)時価総額予想PERPBR配当利回り
ホンダ7267 約6.6兆円約21倍約0.5倍約4.8%
トヨタ7203 約43兆円約12倍約0.9倍約3.6%
日産7201 約1.5兆円約0.3倍無配〜低位

ホンダはトヨタの約6分の1の規模ですが、PBRはより割安、利回りはより高い。「小さくても二輪世界一・還元は厚い」のが立ち位置。日産より一段上で、トヨタより小さく・安い、その中間です(数字は概算)。

08 / 市場・アナリストの評価

評価は「中立」がやや優勢。

アナリストは1年後の目標株価と投資判断を出します。ホンダは割安さ・高配当を評価する声と、四輪の先行き不透明を警戒する声が入り混じり、中立寄りの評価です。

投資判断(レーティング)の内訳

コンセンサスは「中立〜やや買い」。★★★☆☆ 前後。

強気・買い
8
中立
9
弱気・売り
1

※ おおむね「強気・買い8:中立9:弱気1」程度の構成(集計元・時点で変動)。割安だが、利益回復の確認待ちという慎重論が中立に表れています。

目標株価(1年後予想)

慎重派
1,200
平均(コンセンサス)
1,600 円台
強気派
1,900

平均目標株価はおよそ1,550〜1,630円で、直近株価(約1,450円)より1割弱の上値余地。一方で「四輪の黒字回復が見えないと上値も重い」という慎重な見方も根強くあります。

市場の関心はシンプルです——「EVの損切りを終えた四輪が、HV回帰と北米で本当に黒字へ戻せるか」。二輪と還元は安心でも、株価が上がるには“四輪の底打ち”の証明が要ります。

出所:みんかぶ・Investing.com・各証券レーティング報道等(2026年6月時点の概算)。目標株価・判断は各社・時点で異なります。

09 / 投資信託での採用状況

日本株の投信なら、ほぼ必ず入る。

時価総額が国内有数なので、日本株のインデックスにはほぼ確実に組み入れられます。割安・高配当・バリュー系の投信でも定番です。

トップ
日経平均・TOPIX・JPX日経400の主要3指数すべてで主要な構成銘柄。日本株のインデックス投信を持っていれば、あなたもほぼ必ずホンダを間接保有しています。

パッシブインデックス投信・ETF

指数に採用 → 連動ファンドが自動的に保有

  • 日経平均株価(225)主要構成銘柄。日経225連動のETF・投信が保有します。
  • TOPIX(東証株価指数)時価総額が大きいため上位構成。TOPIX連動型の定番。
  • JPX日経インデックス400ROE・ガバナンス等で選ぶ“質”の指数にも採用(赤字の年は採用基準に注意)。

時価総額が大きいほど、インデックスの中での比率も大きくなります。ホンダは日本株インデックスの主要銘柄の一つ。指数が動けばホンダも動く、という関係です。

アクティブ割安・高配当向けファンド

バリュー・大型・高配当を狙う投信の定番

  • バリュー(割安)株ファンドPBR約0.5倍・低い純資産倍率の大型株として、割安株ファンドの王道的な組入候補。
  • 高配当株ファンド利回り約4.8%・大型で、日本の高配当株ファンドに採用されやすい。
  • NISA向け・国民的銘柄1株約1,450円で買いやすく、知名度も高いため新NISAの個人マネーの受け皿に。

出所:各指数の構成銘柄、運用会社の交付目論見書・マンスリーレポート等。保有比率は時点で変動します。

10 / 投資家からの評判

国内では「身近な技術の会社」。
海外は「割安だが四輪が不安」。

ホンダはバイク・クルマで生活になじみ深く、国内の個人に人気。一方、海外の機関投資家は割安さと高還元を評価しつつ、四輪のEV戦略を冷静に見ています。両者の目線を並べます。

国内の個人投資家

「世界一の技術、配当も魅力」
  • 二輪世界一・F1やHondaJetなど技術への憧れ。株式分割で1株約1,450円と買いやすく、個人に人気。
  • 利回り約4.8%の高配当と大型自社株買い。赤字でも配当を維持した姿勢が安心感に。
  • ±値動きは自動車株らしく為替・関税で振れる。割安だが、四輪次第で上がりにくいという声も。
  • 上場来初の赤字に「世界一なのに大丈夫?」という不安。四輪のEV出遅れが個人にも意識されています。

海外の機関投資家

「割安・高還元は評価、四輪は警戒」
  • PBR0.5倍の割安さと高い総還元。大型のバリュー+高配当株として組入れ対象に。
  • 二輪の世界的な強さと安定収益。景気・関税に振られにくい独自の柱を評価。
  • 四輪のEV出遅れと採算の弱さを警戒。中国勢・テスラとのEV競争で見劣りする懸念。
  • ±外国人比率は約3割。日産との統合破談で“単独路線”となり、四輪の規模不足をどう補うかに注目。

株主の内訳(2026年3月末・所有者別の概算)

外国人 約32%
個人 約29%
金融機関 約28%
外国法人等 約32%個人・その他 約29%金融機関 約28%その他法人 約8%+金商業者 約3%

特徴は、外国人比率が約32%とトヨタ(約2割)より高いこと、そして個人株主が分厚いこと。筆頭株主は日本マスタートラスト信託(信託口)で約19.8%。系列の持合いはトヨタほど厚くありません。

財務と効率の素顔

本業は強いが、四輪の損失が全体を沈めた1年(26.3期・概算)。

  • ROE(自己資本利益率)約△3.5%(赤字)
  • 二輪事業の営業利益率約18%
  • 自己資本比率約35.3%
  • 当期損益(親会社帰属)△約4,239億円
  • 売上収益21.8兆円

ROEは赤字でマイナスですが、二輪の営業利益率は約18%と高収益。自己資本比率は約35%と健全で、財務そのものは底堅い。問題は効率ではなく、四輪の一過性損失でした。

出所:本田技研工業 有価証券報告書・IR資料、IRBANK、各金融情報サイト。株主構成は2026年3月末の所有者別の概算です。

11 / 二輪世界一・還元という“顔”

なぜ「二輪で世界一」が、効くのか。

ホンダを語るうえで外せないのが、二輪(バイク)の世界一という独自の屋台骨と、厚い株主還元。四輪がEV損失で沈んでも会社を支えた稼ぎ頭こそ、ホンダの“顔”です。

ホンダは数十年にわたり世界一のオートバイメーカー。世界販売は年約2,200万台で、四輪(約340万台)の6倍以上を売ります。インド・東南アジア・ブラジルなど新興国で圧倒的に強く、26.3期の二輪営業利益は7,319億円と過去最高。四輪が赤字でも、二輪と金融で会社を黒字に保てる強さがあります。

もう一つの顔が還元の厚さ。配当利回りは約4.8%と自動車株でも高く、年1兆円規模の自社株買いを組み合わせ、25.3期は総還元性向124%と利益以上に株主へ還元しました。赤字に転落した26.3期も配当(70円)を維持。利益より「還元の継続」を重んじる姿勢です。

強み“二輪世界一・高還元”の土台

  • 二輪で世界一:年約2,200万台。新興国に強く、景気や関税に振られにくい安定した利益の柱。
  • エンジン技術:バイク・クルマ・発電機・船外機・航空機まで、動力の総合力。
  • 厚い還元:利回り約4.8%+年1兆円規模の自社株買い。総還元性向は100%を超える年も。
  • 割安:PBR約0.5倍と解散価値を大きく下回り、自動車株でもとくに安い。

留意点“四輪が弱い”という宿題

  • 四輪の採算:EV損失で上場来初の赤字。本来の主役の収益力が弱い。
  • EVの出遅れ:戦略を一度損切り。中国勢・テスラに対し電動化で見劣り。
  • 米関税・為替依存:北米偏重の四輪は通商政策と円相場に利益を左右される。
  • 単独路線:日産との統合は破談。四輪の規模不足を自力で補う必要がある。
シリーズの中での位置づけ

各社には“顔”がある

INPEXの黄金株、JTの政府保有、三菱商事のバフェット、MUFGのモルガン・スタンレー、NTTの連続増配、トヨタの財務最強のように、各社にはその会社を象徴する“顔”があります。ホンダの顔は、二輪で世界一・還元が厚いこと。規模ではトヨタに及びませんが、トヨタが持たない“バイク世界一”という独自の屋台骨と、より割安・より高い配当で存在感を示すタイプです。

12 / マクロ環境との接点

関税・電動化・為替・新興国。
大きな波は、ホンダにどう効くか。

世界でバイクとクルマを売る会社だけに、世界のテーマが様々な経路で効いてきます。追い風と逆風を整理します。

関税・通商政策

逆風/四輪の重し

米国の高関税は、北米偏重の四輪事業に直接の打撃。輸出採算を圧迫します。

対抗策は北米の現地生産拡大。ただし設備投資がかさみ、効果が出るには時間がかかります。

電動化・脱炭素

両面(HVは強み)

EV市場の急減速で巨額損失を計上し、当面はHV(ハイブリッド)へ回帰。HVは現実解として稼げます。

一方で次世代EVの開発は継続。電動化の主役がEVに戻れば、出遅れが重荷になるリスクも残ります。

為替(円相場)

両面(円安は追い風)

輸出企業のホンダは円安が追い風、円高が逆風。北米の稼ぎを円換算で押し上げます。

半面、利益が為替に支えられる体質は、円高局面での減益リスクでもあります。

新興国・二輪需要

追い風/柱の成長

インド・東南アジアなど新興国の経済成長は、二輪需要の追い風。ホンダの稼ぎ頭を直接伸ばします。

二輪の電動化(電動バイク)でも先行投資を進め、世界一の地位を守りにいきます。

出所:各種報道・会社資料等(2026年6月時点)。マクロの影響は不確実性が高く、方向感を示すものです。

13 / 5年・10年・20年の立ち位置

「バイクとクルマ」から「モビリティ」へ。

ホンダが描く長期の方向性です。近い将来は会社の計画20年後は公表目標のない見立てとして、区別して読んでください。

いま / 2026
二輪世界一・四輪は赤字
現在地
実績
  • 二輪は営業利益7,319億円で過去最高
  • 四輪はEV損失で上場来初の赤字
  • 株価はPBR約0.5倍の割安圏
〜5年 / 2030
四輪を立て直す
中期方針
会社方針
  • HV回帰で四輪の採算を立て直す
  • 北米の現地生産で関税をかわす
  • 二輪の世界一を守りつつ電動化も進める
〜10年 / 2035
電動・知能化
長期ビジョン
会社ビジョン
  • 次世代EVと水素を本格展開
  • ソフト・知能化で“動くデバイス”へ
  • 二輪・四輪・パワーユニットの総合力で稼ぐ
〜20年 / 2045
分岐点
構造シナリオ(推定)
見立て
  • 二輪世界一を軸にモビリティ企業へ進化
  • 四輪はEV競争・規模次第で序列が変わるリスク
  • リスク:電動化で出遅れ、“二輪は強いが四輪が細る”懸念

近い将来は会社の方向性に沿っていますが、達成は環境次第で保証されません。20年後は不確実性が大きく、ここでの記述は一つのシナリオです。

14 / 配当・株主還元

赤字でも、配当維持+大型自社株買い。

ホンダは利益が落ちても、配当と自社株買いで株主還元を厚く続けてきました。赤字に転落した26.3期も配当を維持し、還元を経営の軸に据えています。

27.3期 予想配当
70
前期と同額(赤字でも維持)
予想配当利回り
約4.8%
市場平均(約2%台)の倍以上
総還元(25.3期)
約1.07兆円
総還元性向124%(配当+自社株買い)

1株配当は分割後の基準で40円→40円→68円→68円→70円→70円(予)と推移。NTTのような毎年連続増配ではありませんが、利益が落ちても減配せず維持してきたのがホンダの特徴です。

還元の主役はむしろ大型の自社株買い。25.3期は約1兆円を買い戻し、配当と合わせた総還元性向は124%(利益を超える還元)に達しました。26.3期も赤字ながら総還元は約9,500億円規模を見込み、発行済株式を減らしてEPSを下支えします。

※ 配当・自社株買いは会社の方針で、将来変わる可能性があります。過去の還元実績は、今後を保証するものではありません。

出所:本田技研工業 2026年3月期 決算短信・配当方針(2026/5/14)、IRBANK。配当性向・利回りは予想EPS・株価からの概算です。

15 / リスクと注意点

割安・高配当でも、見ておくべき4つの論点。

二輪世界一で還元も厚いホンダですが、弱点もあります。良い面だけでなく、ここを併せて見るのが大切です。

01

四輪の採算とEV戦略

本来の主役である四輪がEV損失で上場来初の赤字に。EVへの読み違いを損切りしHVへ回帰したが、電動化の主役がEVに戻れば再び出遅れる懸念。四輪の黒字回復が最大の関門。

02

米関税・通商政策

北米に偏った四輪は、米国の高関税に利益を大きく左右される。現地生産で対応するが効果には時間がかかり、政策次第で上下に振れる。

03

為替への依存

利益は円安の追い風に支えられる体質。円高に振れると四輪を中心に減益要因に。本業の実力と為替効果を切り分けて見る必要がある。

04

規模不足と単独路線

四輪の世界販売は約340万台でトヨタの3分の1強。日産との統合は破談し単独路線に。EV・ソフトの巨額投資を、規模の小ささを抱えたまま自力でまかなえるかが課題。

ホンダは「二輪世界一・高還元の割安株」だが、四輪の立て直しが宿題として見るのが素直です。二輪と配当の安心感を土台に、EV・関税・為替という四輪の外からの波を併せて見るのが近道です。

/ 3行でまとめると

このページの要点。

正体:ホンダは二輪(バイク)で世界一・年約2,200万台のメーカー。四輪(クルマ)・金融・パワープロダクツも持つが、利益の柱は二輪。エンジン技術を軸に飛行機(HondaJet)まで手がける。

決算:26.3期は売上21.8兆円(過去最高水準)だが、EV関連で約1.5兆円の損失を計上し四輪が赤字転落。上場来初の営業赤字(△4,143億円)・最終赤字(△4,239億円)に。二輪は7,319億円と過去最高益。

指標:株価はPBR約0.5倍と大きく1倍割れで、自動車株でもとくに割安。予想PERは赤字明けで高めだが、利回り約4.8%は高水準。27.3期は純利益2,600億円で黒字回復を見込む。

評判:国内は技術と高配当で人気、海外は割安・高還元を評価しつつ四輪のEV出遅れを警戒。外国人比率は約3割でトヨタより高い。日産との統合は2025年に破談し単独路線。

未来:鍵は四輪の立て直し——HV回帰と北米現地化で採算を戻せるか。二輪世界一と厚い還元(配当維持+年1兆円規模の自社株買い)は安心だが、株価が上がるには“四輪の黒字回復”の証明が要る。